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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


手刀を叩き込まれた剣士の存在を目にしたことにより、他の剣士たちは恐怖から何も言葉を発せず、そして凄まじい爽快感により気を失うことさえ許されず、柱二人が稽古をしている隣りで懸命に打ち込みを行っている。

柱が柱に行う稽古が幾ら気になっても、そちらに意識を向けてしまえば無一郎に叱られ、えげつない薬を瞼に塗り込まれてしまう。

しかしどうしようもなく気を削がれる状態もようやく終わりを迎えようとしていた。
永遠と道場内に響いていた木刀のぶつかり合う音が鳴り止み、床を通して伝わってきていた振動がピタリと止まった……つまり無一郎の稽古が終わりを迎えたのだ。

「随分よくなったね!風音ちゃんは持久力がないって言うより、不死川さんの動きを真似ようと意識し過ぎてたんじゃないかな?違う呼吸なはずなのにそっくりだったよ?」

「ありがとうございます!なるほど……実弥君みたいになりたいって思い過ぎて、知らず知らずのうちに真似ていたのかもしれません。やっぱり実弥君に無理を言ってまで、お稽古付けてもらいに来てよかったです。生き残る確率が日々鰻登りです」

ふにゃりと笑う風音につられ、無一郎もふにゃりと表情を和らげる。

「風音ちゃんは本当に不死川さんのこと大好きだね。俺も不死川さんのこと大好きだから、死んで悲しませてしまわないようにお互い頑張ろ!あ、俺は風音ちゃんのことも大好きだよ?」

「はい!実弥君を悲しませることはしません。それにしても……時透さんが嬉しいことばっかり言ってくださるので、嬉しいが爆発しそうです!私も時透さんが大好きです!実弥君が大好きなのは大前提なのですけど、私、実弥君の優しいところとか笑顔とか」

「それ以上やめとけェ……」

危うく実弥の大好きなところ暴露大会が始まろうとしたところで、当事者である実弥が耳まで真っ赤に染めながら二人の間に割って入った。

「ったく……稽古後にどうすりゃそんな会話になるんだよ。風音、俺は時透と手合わせしてくっから、お前は貸してもらった部屋で休んどけ。時透、外行くぞ」

二人の返事を聞く前に実弥は道場からそそくさと出ていってしまった。
かと言って怒っている雰囲気は見受けられなかったので、風音と無一郎はニコリと微笑み合い、実弥に言われたことを各々が実行するために体を動かした。
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