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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


その無一郎が風音と実弥のところへ戻ってきたということは、剣士たちへの厳しい厳しい稽古を終わらせたということだ。
それに加え、先ほどから剣士たちが道場の端にペイっと寄せられ、休む未来が頭に流れ込んできている。
つまり風音への稽古が再開されることを意味しているので、慌てて水を流し込んだ次第である。

そして全ての準備が完了すると、体をワナワナ震わせ向こうを向いてしまった実弥と、楽しそうに実弥にじゃれつく無一郎に向かって声を掛けた。

「お待たせしました!水分、塩分補給完了です!でもあと少し待ってていただけますか?剣士の皆さんにお水と手拭いを」

「風音ちゃんは甘過ぎる。俺の言ってること全然改善しない人たちなんて放っておきなよ。はぁ……君たちさぁ、この子に先見せてもらってるんでしょ?何でもっと動けないかなぁ」

実弥から風音へ、そして剣士たちへと視線を巡らす無一郎の表情は笑顔から苦笑いへ……最後には再び怒りへと移行してしまった。

「あ、そうそう。伊黒さんからいい物貰ったんだよ?今まさに使う時だよね!」

満面の笑み。
年相応のあどけない笑顔を見せた無一郎がポケットから取り出した物を目にして、風音と実弥の表情が引き攣った。

「さ、実弥君。あの容器、見覚えあるように思うのは私だけかな?」

「……見覚えも何も、風音が伊黒に頼まれて作ったあの薬入ってる容器だろ。ハハッ、時透までアイツらの瞼に塗り込んでんじねェか!へぇ、時透ってあんな楽しそうな表情も出来るヤツだったんだなァ」

なんと無一郎が取り出したのは、風音が自身の眠気対策に調合し、後に小芭内に気に入られ製作を依頼された爽快感が凄まじい塗り薬がおさめられている容器だった。

実弥は無一郎が剣士たちに嬉々として塗り込んでいる様を楽しげに眺めているが、出処のわれている薬を持ち出された風音は顔面蒼白だ。

「時透さんの笑顔は素敵だけど!ダメダメ!剣士の皆さん泣いちゃってるよ!それに……」

涙目になる風音に一人の剣士がグズグズの顔を向けて小さく一言。

「か、可愛らしい狂薬ぎゃっ!」

風音の耳は実弥に塞がれた。
涙の溜まった瞳に映ったものは、無一郎により頚椎に手刀を見舞われ、悲痛な叫びを残して気を失った剣士の姿だった。
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