• テキストサイズ

涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


「心配するに決まってんだろ。……戦始まる前に風音の頸斬らせるようなことだけはさせんなァ。風音の頸なんざ斬りたかねェぞ」

どうやら実弥は行冥から聞かされた風音の提案について、思うところが存分にあるようだ。

それもそのはず、身を呈して鬼舞辻無惨を足止めするお館様に、風音が付き添うと聞かされたからである。
命の危険も然る事乍ら、総力戦で大きな役割を果たすであろう風音の力が、鬼舞辻無惨によって鬼側の手に渡る可能性が大いにあるということ……つまり柱である風音が鬼にされてしまう事態になりかねないからだ。

万が一にでもそうなった時、近くで待機している行冥が風音の頸を落とすと聞かされたが、その役割を実弥が行冥に頼み込んで自分にしてもらった。
……以前に風音とそう約束したのだと説明すると、渋々ながら行冥は一番苦しく辛い役割を譲ってくれた。

その遣り取りを目の前で見聞きしていた風音は実弥に体を預け、腕に添えていた手の力をキュッと強める。

「うん。実弥君が私の提案を受け入れてくれたから、これから開戦まで何回も先を見ることが出来るでしょ?実弥君が開戦前に見る光景を元に、たくさんの対応策を考えるつもりだから安心して?実弥君を悲しませるようなこと、絶対にしない」

風音の言葉に何の保証もありはしない。
ありはしないが、鬼狩りにおいて風音はやってのけると言い切ったことは、これまで必ずどんな手を使ってもやり遂げて来た。
暴走し傷だらけにはなっていたもののやり遂げて来たので、実弥は風音を信じてやるしか残された道はない状態だ。

「はァ……とんでもねぇ女好きになっちまったもんだ。そんな女好きになっちまった俺も、とんでもねぇ野郎に違いねぇんだろうけどよ。頸斬ってくれる悲鳴嶼さんや、その許可を出してくれたお館様の優しさが身に染みて泣く女…… 風音くれぇだろうなァ」

……本部で風音が涙を目に溜めながら実弥の元に戻った理由はこれだった。

なんでも辛い役割とその役割を許可してくれた二人の強く優しい心根が、風音の涙腺を刺激したらしい。
実弥とて鬼殺隊の柱として鬼狩りをしているので、風音の気持ちも分からんでもなかったが……
/ 985ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp