第22章 想いと約束
「コイツが何すんのか知りませんけど、そうするって話ついてます」
間髪なく答えてくれた実弥の存在が嬉しく、風音はそれに応えるべくモゾモゾと身動ぎして腕の中から抜け出し、代わりに暖かな手を握り締めた。
見上げると優しく瞳に弧を描かせてくれていたので、風音もつられて笑顔となる。
それを見た行冥はやはり嬉しそうに何度か頷き、実弥や他の柱たちが知りたいと強く願っていることを話し出した。
「……分かりました。はァア……約束は守るんで心配しないで下さい。悲鳴嶼さん、これから時透んとこ行かなきゃなんねェから、話の続きは次の会議にでも。あと……言うの遅くなっちまったんですが」
盛大な溜め息をついた実弥の額から首にまで血管が浮き上がっているので、開戦時の状況やその時に風音が起こす行動にとてつもなく憤りを感じているのだろう。
そんな実弥を横目に風音がハラハラしていたのだが、行冥に向き直り居住まいを正す頃には血管が全ておさまり、凛とした佇まいとなった。
何を行冥に伝えようとしているのか……長い月日を共にしている風音だけでなく、行冥もしっかりと感じ取ったようで、ただ静かに実弥を見つめて言葉を待った。
「俺が突き放してた時も今現在も、弟の玄弥を見捨てずに側で見守り続けていてくれたこと、心から感謝してます。悲鳴嶼さんが側に居てくれたから、弟はこれまで生きてこられた。後日、改めて悲鳴嶼さんの屋敷に挨拶に伺わせて頂きます」
長年言えなかったこと。
行冥にずっと感謝していたのに、玄弥を弟だと認めることをしなかったばかりに、行冥へ感謝を述べることが出来なかったのだ。
畳に手を付き深くこうべを垂れて感謝の念を今更伝えたとしても、まだまだ足りない。
そんな想いが伝わる実弥の言葉や声音、姿勢に、行冥は静かに穏やかな表情でそれを見守る風音に笑みを向け、実弥の頭にポンと優しく手を置いた。
「顔を上げなさい。私は玄弥が不死川の弟だから側に居たのではない。初めは才能がないからと鬼殺隊を抜けろと言っていたくらいだ。しかし、あの子は一人の大切な者のために強くあろうと、ひたむきに努力を惜しまぬ子だったのでそばに居ることにした。……少し癇癪持ちなのが玉に瑕だがな」