第22章 想いと約束
風音を送り出して暫く。
実弥は一人、静かな部屋で辛抱強く待ち続けた。
(アイツ……お館様のお身体に障るようなこと言ってねェだろうなァ?!あ"ぁ"……無理言ってでも同席させてもらっときゃよかったァ……アイツの暴走事前に止めれんの俺だけだってのに、油断しちまってた)
そしてここにも風音の首根っこを掴み損ねたものが一人。
いつもなら考えがあるのだと風音が口にした瞬間、首根っこを掴んで暴走を食い止めることをしていた。
しかし思い悩んで口数が明らかに少なくなっていた風音を前にすると、首根っこを掴む以前に笑顔にしてやらなくてはとの思いが勝ってしまったのだ。
それに気を取られたばかりに……首根っこを掴み損ねて今に至る。
「風音ー……頼むからお館様のお身体に障ること言ってくれんなよォ……お館様が卒倒しちまったら合わせる顔が……あ"ぁ"嫌な予感しかしねェ」
実弥の嫌な予感は的中している。
今現在、お館様の度肝を抜いている風音の考えを知っているのはお館様を除けば行冥だけだ。
その行冥が上手く窘めてくれているのを願うばかりだが、行冥がここに居ることを知らない実弥は、ただただ風音が暴走していないことを祈るばかりである。
冷や汗を背中に伝わせ膳を指でコツコツ叩きながら跳ねっ返り娘を待ちわびていると、鼻声でグジグジと明らかに落ち込んでいる声音が部屋の外から響き、襖が恐る恐るゆっくりと開いた。
「実弥君、戻りました。あのね……条件次第では実弥君にお話ししてもいいよって、お館様が仰ってくださったの」
誰かに暴走を窘められたのか?
お館様に優しく諭され涙を瞳に浮かべているのか何なのか……取り敢えず事情を聞かなくては分からないので、溜め息をつきながら腕を広げ……かけて、その腕を下におろした。
「悲鳴嶼さん……なんで悲鳴嶼さんがここにいるんですか?」
腕を下におろした要因、それは涙を浮かべる風音の頭を撫でてやっている行冥の姿が目に映ったからだ。