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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


「え?聞いたふりして、こっそり実弥君の様子を窺うよ?近くにいちゃダメなら、ギリギリの所で待機して瞬きせずに目をお皿のようにして見続ける!実弥君に仇なす者は私が蹴散らさなきゃだしね!」

緊張感はどこへやら……
しかし風音は至って本気なようで、実弥がポカンとする内容を真剣な表情で言ってのけている。
横向きに実弥の胸元に身を委ねながらも、背に回した手に力が入ったことからも本気度が伺える。

表情も体も本気な風音に実弥は溜め息を零し、金の髪に覆われた額に自身の額をコツンと合わせた。

「聞いたふりって……お前なァ……ったく、その跳ねっ返りな性格どうにかしろよ。だが……そうかィ。なら俺もお前の願いを聞いたふりしてたらいいってことだ」

額に広がる実弥の心地よい暖かさにフワフワと癒されていたが、返ってきた言葉にビクリと体を震わせる。

「え?!いや、それはどうなんだろー……聞いたふりって言うのはあくまで私のあれであって……実弥君がそんなことをする必要ないと言いますか……うん!私なら聞いたふりしないで素直に言うこと聞くよ!だから実弥君も」

「今更遅ェよ、馬鹿。まァ、とにかくだ。好いた女が身を呈して何かしようって時に、呑気に待ってやれるほど俺は気が長くねェんだ。お前の案を採用してやるよ」

なんてことだ。
風音が余計なことを言ったばかりに、その余計なことが採用されてしまった。

だがすぐ側で寄り添うのではなく、開戦にギリギリ支障をきたさないところで見守ってくれるということだ。
余計な言葉も余計なばかりで終わらなかったと考えれば、存外悪くなかった……のかもしれない。

そう思い直した風音は実弥の胸元に顔をうずめてキュッと抱き締めた。

「実弥君は何だかんだで私のお願い叶えてくれるよね。いつもありがとう。私、実弥君と出会えて本当に幸せ」

「願い叶えたことになってんのか?よく分かんねぇけど、お前が喜んでんなら何でもいい……ほら、愛しい愛しい風音ちゃんよォ、そろそろ時間だろ?シャキッと行ってこい!」

おどけた口調であっても風音にとって飛び上がるほどに嬉しい実弥の言葉に、文字通り喜びながら飛び上がってしっかりと地に足を付けた。

「はい!実弥君、行ってきます!」

こうして風音は実弥に見送られお館様の元へと急いだ。
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