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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


翌朝、風音と実弥は杏寿郎や事情を軽く説明した千寿郎や槇寿郎、敢えて事情を説明しなかった剣士たちに見送られて煉獄邸を後にして本部を目指した。

いつもなら実弥へと言葉でじゃれつき続ける風音であっても、本部へ向かう道すがらはもちろん、本部に到着して通してもらった部屋で待機している今も口数が少ない。

それは実弥や快く見送ってくれた杏寿郎たちの心境を考えてのこと。
あとは頭の中に今日お館様と話すであろう開戦時の光景が永遠と頭の中を巡り、密かに混乱状態に陥っているからである。

もちろん実弥は風音が混乱状態に陥っていることは承知の上なので、問い質したい気持ちを懸命に抑えて僅かに震えている頬をそっと撫でた。

「あんま考えすぎんなァ。顔色……真っ青になってんぞ。ほら、ちょっとこっち来い」

頬を撫でながら反対の手を広げてやると、風音は拒むことなくモゾモゾと動き出し、素直に実弥の胡座をかいた足の上にちょこんと座って身を委ねた。

「ありがとう、実弥君。私ね、実は一つだけ考えがあるの。上手くいくか分からないんだけど……何もかも実弥君に話しても良くなった時は、怒らずに聞いて受け入れて欲しい」

怒らずにと願うということは間違いなく風音の身に危険を及ぼすものだろう。
しかも風音一人に……だ。

「近くに……その考えを実行する時に、俺はお前の近くにいられねェのか?」

「うん。実弥君がいてくれたら心強いんだけど、それだと好機を逃してしまうから。実弥君が近くにいたらね、きっと総力戦すら起こらなくなっちゃう」

総力戦の最後は風音に見せてもらった。
どうなるのか分かっているからこそ、総力戦がいかに大切なものかも理解している。

その総力戦が起こらなくなるなどあってはならないが、風音の力になれないどころか側にいることさえ許されないとなると、実弥は容易に風音の願いを受け入れてやれなかった。

「守ってやりてぇのに、お前はいつも腕の中から飛び出して行っちまう。なァ、風音……お前が俺と逆の立場ならどうすんだよ?側に来んなって言われて言う事聞くかァ?」
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