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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


風音が懸念した通り、本部……と言うよりお館様はどうあってもこの件を公にしたくないらしい。
……少なくとも実弥や、今共にいる杏寿郎には聞かせたくない内容ということだろう。

実弥たちが大切に想ってくれていると分かっているからこその判断なのだろうが、だからこそ突き付けられた条件に歯痒さを感じる。
しかし歯痒さを感じているからと言って無理にでも同席させてくれと願ってしまえば、自分が風音に同行することすら許されなくなるかもしれない。

それならば杏寿郎が風音に同行する……と名乗りを上げるのは目に見えているので、喉元まで出てきた言葉を飲み込んだ。

「それでいい。今日はもう日が暮れる……煉獄ん家で世話なるから、楓も爽籟や要と好きに過ごしとけ。煉獄、明日のコイツとの手合わせ見合わせて構わねぇかァ?」

今まで二人と一羽の遣り取りを静かに見守っていた杏寿郎は、張り詰めていた雰囲気を和らげるように穏やかに笑い、実弥の肩と風音の頭の上に順番にポンと手を当てた。

「柱の稽古を受け柱たちと手合わせをしてきた風音との手合わせが出来ないことは残念だが、他ならぬお館様からの招集ならば致し方あるまい。風音、気を付けて行っておいで。不死川、風音をくれぐれも頼んだぞ!」

杏寿郎もお館様の話の内容が気になっているに違いないのに、出てきた言葉は、温かく見送る言葉だけだった。

いついかなる時も人の心に寄り添ってくれる杏寿郎に二人は笑みを返し、それぞれが大きく頷いた。

「はい!杏寿郎さん、私はあまり出歩けませんが、機会がありましたらぜひ手合わせお願いします」

「例え鬼が出やがってもコイツとぶち殺してやるから心配すんなァ。取り敢えず風呂入って飯食おうぜェ……腹減っちまって頭も回りゃしねェ」

杏寿郎の笑顔に元気付けられた実弥は握ったままだった風音の手を引き、風音は笑顔で杏寿郎の手首をキュッと握り締めて引っ張った。

「改めまして……杏寿郎さん、お邪魔します!今日はね、お魚入り炊き込みご飯にサツマイモのお味噌汁もあるんですよ!実弥君も杏寿郎さんもたくさん食べて下さいね!」

まだ心の中のモヤは晴れていない。
しかしこの件で一番気を揉んでいる風音が笑顔なのだからと、実弥も杏寿郎も笑顔を崩しはしなかった。
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