第22章 想いと約束
「いえ!私も楽しかったですし、お饅頭の作り方を教えていただけたので私がお礼を言いたいくらいです。それより何より皆さんに喜んでいただけたのが一番嬉しい!」
風音が二人の間で二人の顔を交互に見上げる度、ふわりと揺れる髪から甘い香りが漂い、手合わせの疲れから甘い物を欲している腹が音をたてた。
「フフッ、お腹の虫がいい声で鳴きましたね!夜ご飯の準備も出来ているので、実弥君と杏寿郎さんがお風呂から上がったらご飯にしましょう!私もお腹空いちゃった」
そして風音の腹の虫も大合唱。
稽古・手合わせ後の和やかな時間を過ごしながら門の前に辿り着くと、風音の肩に艶やかな黒い羽をもつ鎹烏、楓が舞い降りてきた。
「楓ちゃんもお帰りなさい。今日は爽籟君と一緒じゃなかったの?」
二羽は仲が良く、風音や実弥が稽古や手合わせをしている時は共に行動し、空の散歩をしたり二人の様子を眺めていることが多い。
そんな楓が今日は一羽で空から舞い降りたので爽籟の所在を確認すると、ほんの少し緊張したような面持ちで答えた。
「爽籟サンハ要サントゴ一緒カト思イマス。私一人本部カラ招集ガカカリマシタノデ、今ハソノ帰リデス。…… 風音サン、明日ノ午前、本部ヘ向ッテクダサイ。要件ハ既ニ把握シテイルト伺ッテイマス」
和やかな雰囲気から一変。
風音のみならず実弥や杏寿郎の纏う雰囲気が一気に張り詰める。
風音が既に把握している本部から招集のかかる要件など、この場の全員に思い当たることは一つしかないからだ。
「そっか……お知らせしてくれてありがとう。明日の午前中だね。必ず……」
「楓。風音は昼夜問わず一人での行動を控えさせてんだ。俺も明日、コイツに付き添う」
放っておけば一人でそそくさと本部に向かってしまいそうな風音の言葉を遮った実弥は、楓も既に承知している事柄を述べた。
すると楓は戸惑うことなくコクリと頭を上下に動かし、実弥の要望を受け入れる。
「ハイ。本部モ不死川様ノ同行ヲ想定シテオリマシタ。デスガ要件ガ済ムマデ、別室デ待機スルヨウニ……ト言伝ヲ言イ渡サレマシテ……」