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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


もちろん風音と実弥が煉獄邸で技の開発を行うことはしなかった。
手合わせも庭の惨状を鑑みた結果、剣士たちの稽古の様子を見ながら別場所で行い、落ち葉を風音が技で集めることもなかったとか。

「やはり風音は開戦時のことを話したがらないか?」

「あぁ。頑なにそれだけは話せないって口開きやがらねェんだ。今までならどんな事でも聞きゃ答えてたから……話せねェってなるとお館様に関することってのは予測出来んだが」

そして二人は別場所での手合わせを終え、煉獄邸への帰路へとついているところだ。
汗を滲ませ並んで歩く二人が気になるのは、やはり風音のみが把握している開戦時の状況である。

実弥の予測は杏寿郎も考えていたことであったらしく、小さく唸りながら首を縦に振った。

「そうであろうな。しかし不死川に話さないのであれば、俺を含む他の者たちに話しはしないはずだ。となると風音の心労が心配なところ。不死川、よく見ていてやってくれ!」

どう育てばこうも人の気持ちに寄り添い、真っ直ぐな言葉のみを嘘偽りのない笑顔で放つ人間になるのか……など考えてもキリのない疑問を頭から追い出し、何気なく空を見上げた。

もう日が傾きつつあり、何となく実弥を物悲しい気持ちにさせる。

「堪んねェだろうなァ。誰にも話せねェこと内に溜め込んでんのに、俺たちと違って気晴らしに一人で家の外にすら出られねェ。昼も夜も関係なくだぜ?」

「確かに心労が耐えない今の状況のみを見れば不憫に写す者もいるかもしれないが、きっとあの子は自身の現状を嘆いていない。それもこれも君が側で寄り添ってくれているからだ!ほら、楽しそうな声がここまで響いてきているぞ!」

……耳を澄まさなくても、剣士たちを元気に励ます声が実弥の耳にも届いてきた。

『あと少しですよ!あと二回!一、二……終わりました!お疲れ様です!いい汗をかいたので、先にお風呂をいただきましょう!そして夜ご飯の後は甘味が待っていますからね!……あ!』

剣士たちが甘味の存在に歓声を上げながら道場から屋敷内へ移動しているであろう賑やかな音と共に、一つだけそれと違う方向へと向かう音が二人に届き、思わず顔を見合わせて笑顔となる。
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