第22章 想いと約束
渋々ながら槇寿郎も庭の後始末をしてくれるらしい。
しかし自分たち柱の後始末を二人に任せっきりになるのは風音にとって不徳の致すところ。
稽古には打ち込まなければならないが、今の自分に出来ることをと考え立ち上がる。
「少しでしたら私もお力になれるかと思います!見ていて下さい!」
そう言うと風音は槇寿郎と千寿郎の返事を聞くことなく、柱二人の邪魔をしない位置まで小走りで向かい、立ち止まって木刀を腰から抜き出した。
「柊木さん、何をなさるおつもりでしょうか?」
「いや……俺にも全く。あの二人を止めるのか?」
そんなことをして二人に……いや、実弥に後で叱られないのだろうかと心配していると、ニコニコと笑みを浮かべながら技を発現させた。
「夙の呼吸 弐ノ型 吹花擘柳…… 陸ノ型 紗夜嵐」
上手い具合に実弥と杏寿郎を避けた一撃目は辺りに散らばっていた落ち葉を空に舞い上がらせ、二撃目でそれらをふわりと包み込む……切り刻みながらだが。
そして切り刻まれた落ち葉は一塊となり、風音のすぐ側の地面にバサリと落ち着いた。
その様子を槇寿郎と千寿郎が口をあんぐり開けて見ているのと同様に、実弥と杏寿郎も目をキョトンとさせ眺め出す。
「やった!上手くいきました!槇寿郎さん、千寿郎さん!これでお掃除は少し楽になるかと思います!」
皆の驚嘆の視線に気付かず無邪気に喜ぶ風音。
確かにこれで庭の後始末は楽になること間違いなしだが、鬼殺のための技をお掃除に活用するなど誰も予想出来なかったことだ。
「風音は器用だな!すまない、不死川との手合わせに夢中で庭の様子を把握出来ていなかった!ありがとう!」
「助かったが……どんな技の使い方してんだよ。技で落ち葉集める奴なんざ見たことねぇわ」
無邪気に喜ぶ風音を曇りなき眼で褒め称えてくれる杏寿郎、呆れ溜め息を漏らしつつも刻まれた落ち葉の前にしゃがみ込み、手で濯いサラサラと遊ぶ実弥。
「いえいえ!鬼狩りには活用……ん?技の威力を増したら、鬼もこの落ち葉みたいに出来るかも!実弥君、杏寿郎さん!ちょっと試したいことあるので付き合って下さい!」
「よォし!気が済むまで付き合ってやる!」
恐ろしい技の開発に勤しむであろう元師弟の二人は、三人が明後日の方向を向いたことなど知らない。