第22章 想いと約束
「杏寿郎さん、お久しぶりです!今日と明日の午前までよろしくお願いします!」
「ああ!こちらこそよろしくな!我が家は俺はもちろん元柱の父上や、日々稽古を行っている千寿郎がいる!目玉のことは気にせず存分に励み休んでくれ!」
「お前ら朝から声デケェ……」
今日も元気いっぱいな風音と杏寿郎に苦言を呈したのはもちろん実弥。
風音と実弥がやって来たのは杏寿郎の生家である。
強行手合わせ兼稽古の旅の工程は
一日目から二日目の朝 煉獄邸にて稽古と手合わせ
二日目の昼から三日目の夕刻 時透邸にて稽古と手合わせ
三日目の夕刻から不死川邸へと帰還予定だが、日の傾き具合によっては、近くの藤の花の家紋の家に身を寄せるかもしれない。
そんな肉体的精神的強行旅の一日目の目的地である杏寿郎の生家に到着し、今は杏寿郎によって屋敷内へと案内されているところだ。
「煉獄の稽古は肉体強化だったっけか?朝から夕方まで基礎鍛錬かよ?」
「そうなるな!腹筋背筋腕立て、素振りに走り込みなのだが、走り込み以外は我が家の道場内で行えるので気も楽だろう!まずは体を解した後、走り込みから始めよう!」
きっと……いや、間違いなく風音がいるから走り込みを初めに組み込んでくれたのだろう。
夕刻から走り込みを行い、万が一にでも目玉に遭遇して鬼が現れ、風音が気に病んだり思い悩まないようにと。
相も変わらずさりげなく相手を思い遣ってくれる杏寿郎に二人は表情を和らげ、到着した居間に腰を下ろした。
「ありがとうございます。これでもかって言うくらい厳しくして下さいね!この日のために気付け薬をたくさん持ってきましたから!」
胸の前で両手をギュッと握り締めた風音はやる気満々、瞳もそれに伴い爛々と輝いている。
しかし『気付け薬』と聞いた二人は体をビクつかせ、実弥はパンパンに膨れた鞄を、杏寿郎は笑顔のまま明後日の方向を向いてしまった。
「?どうしましたか?」
「どうしましたかってお前……大量の気付け薬なんざ飲んで体に害ねェんだろうなァ?見てみろ、煉獄が言葉失っちまってるぞ。薬飲む前に休めよ……」
「ふむ……君にはいつも驚かされる!気付け薬は飲まなくていい。気を失うほど疲れたのならば、そのまま休んでくれ」