第22章 想いと約束
呆れながらも心配そうに眉をひそめつつ、感触を楽しむように柔く頬をふにふにと摘む実弥と、体まで動かしながら風音の全身をぐるりと見回してくれた蜜璃。
二人に笑みを返して優しい二つの手を握り締める。
「怪我はなくて汚れだけです!汚れなんて気にしてたら見逃しちゃうでしょ?お二人の手合わせの動きが特殊で、見ているだけで勉強になるものだったから見逃したくなかったんです!」
目をキラキラと輝かせ体をうずうず動かしながら感動を伝えようとする風音に二人は笑みを向け、それぞれが握られている手を引っ張った。
すると自然と蜜璃の生家へと三人で向かうことと相成る。
その三人を照らす太陽はまだ空高く昇っており、燦々と明るい陽光が降り注いでいるのだが……それと反して三人の表情は穏やかなものから一変。
警戒するものへと変化した。
そして同時に走り出し、向かった先は垣根の陰。
瞬発力、速力共に抜きん出た実弥の手が誰よりも早く何かを掴み、次いで陰に到着した風音によって叩き落とされてブーツで何かの半分を踏み潰した。
「お昼間から鬼殺隊の情報収集に精が出てるね。聞こえてるのか知らないけど……この目玉の存在は既に鬼殺隊全隊士に知れ渡ってる。残念だね、あんた達の大好きな夜に情報集められなくて。……はぁ……この目玉、あんたと繋がってんでしょ?根こそぎ日に炙ってやるから」
この目玉とそれを生み出した鬼が感覚を共有しているのかは誰にも分からない。
分からないが万に一つでも痛みを共有しているのならば……と、実弥と蜜璃が身震いするほどに冷たく鋭い声音で吐いた言葉通り、敢えて残していた半分の目玉を陽光差す道へと蹴り飛ばした。
すると目玉は何の音も発することなく、日に焼かれ塵となって霧散していった。
その様を感情の篭っていない瞳で見つめていると、頭と腕に暖かなものが添えられる。
「挑発上等だ。ただ今から甘露寺ん家に戻ると厄介事に巻き込んじまうかもしれねェ。荷物全部持ってんだろ?このまま帰るぞ」
「風音ちゃんの強気な姿勢素敵だわ!風音ちゃんたちがお家に来ることを厄介だなんて思わないから、気持ちが落ち着くまで休んでいっていいんだよ?」