第22章 想いと約束
度々げんなりさせられながらも音楽が止まるはずもなく、いつの間にか風音が注目を集め一人で踊っている状態になった。
……えらく楽しそうに踊ってるなぁと思っていたら、実弥の手が突如として引っ張られ、踊りの渦中に放り込まれることとなる。
手を引っ張ったのはもちろん風音。
「何でこうなった……」
「せっかくの楽しいお稽古だよ!実弥君も皆さんも一緒にしましょうよ!」
一人見られるのが恥ずかしいという訳ではなく、どうやら楽しい稽古を皆で共有したかったらしい。
頬を紅潮させ一目見ただけでも楽しいと分かる笑顔の風音の願いを実弥が無視出来るはずもなく、若干の恥ずかしさを胸に燻らせつつも共に踊り、蜜璃の稽古を再開させた。
それからバテていた剣士たちも嬉々として稽古に舞い戻り、この日の稽古は終始和やかな雰囲気で終了したそうな。
蜜璃の稽古が終了した翌日。
二人はしっかりと蜜璃との手合わせも敢行させ、それもあと少しで終わりを迎えようとしていた。
「風の呼吸ーー」
「恋の呼吸ーー」
いつも通りの実弥の暴風逆巻く強烈な威力の技と、呼吸名から技名まで全てが可愛らしい……のにとんでもない威力の技が風音の目の前でぶつかり合い爆ぜる。
「やっぱり柱同士の手合わせはいつ見ても激しいっ!実弥君が巻き上げた砂が……蜜璃ちゃんの独特な可愛らしい動きでこっちに飛んでくる!しかも勢い凄くて……い、いたたっ?!」
砂粒から重さがあるはずの小石までもが宙を舞い、容赦なく風音の体や顔に襲い掛かる。
だからと言って二人の手合わせから目を離すなどしたくない風音は、腰から木刀を抜き出して構えを取った。
「夙の呼吸 弐ノ型 吹花擘柳……改」
最終手段。
技で砂や小石を吹き飛ばす道を選んだのだが、大々的な技を出して二人の集中を途切れさせることが憚られ、改と言いつつ必要最低限な威力の技を出すだけに留めた。
しかしそれで砂や小石を防げるのは一瞬だけ。
(……諦めよう。それにしても蜜璃ちゃんの痣って、蜜璃ちゃんそのものと一緒で可愛い形!鍔の形と同じ形の痣。同じ痣でも本当に形は人それぞれなんだなぁ)