第22章 想いと約束
「ご褒美ってお前なァ……背中を手で押してるだけだろうが」
それでも風音にとってはご褒美に他ならず、背に伝わる温かさが離れてしまっても笑みを浮かべたままだ。
「柔軟付き合ってくれてありがとう!実弥君、一緒に蜜璃ちゃんのお稽古受けてみない?たぶんそろそろ音楽に合わせて体を動かすお稽古になると思うから」
体勢を戻し姿勢よく正座した風音の輝かんばかりの笑顔に、実弥は体を僅かに引いてたじろぐ。
実弥とて柱の一人。
今まで様々な稽古や鍛錬を行ってきた。
しかし音楽に合わせて踊るなどしたことがないし、そもそも考えたことすらない。
別に音楽に対して苦手意識がある訳ではないが、踊るなど出来るか分からず……どうしても躊躇ってしまうようだ。
「ね!私、実は昔にお母さんとお父さんと歌に合わせて、適当に踊る遊びしてたんだよ!楽しかった記憶しかないから、実弥君も楽しんで踊れると思う!」
実弥には分からなかった……
歌に合わせて適当に踊る遊びがどういったものなのか。
それでも楽しいと風音が言うのであれば楽しそうに思えてくるから不思議なものだ。
「まァ、せっかくここ来て見てるだけってのも味気ねェし、少しだけなら付き合ってやるよ。ただ甘露寺と手合わせ始めるまでだぞ?」
嬉しそうな笑顔でちょこんと座る風音に手を差し伸べると、素直にそれを受け入れて共に立ち上がる。
するとまるで二人が立ち上がるのを待っていたかのように蜜璃の声が響いた。
「そろそろ音楽に合わせて体を動かしましょ!あら?不死川さんも一緒にお稽古するんですね!素敵!」
と、何故かキュンキュンされてゲンナリする実弥をよそに音楽が鳴り響き、まずはお手本として蜜璃の動きを見せてもらった。
(嘘だろ……コイツこんな動けんのかよ。一回見ただけだよなァ?)
風音や実弥を含めた剣士たちが蜜璃の軽やかな動きを見せてもらった後、いざ実践が始まった。
一度見ただけなので実弥や剣士たちは何度か動きに戸惑いを見せたが、風音は楽しそうに全力で体を動かして正確に踊ってみせている。
「風音ちゃん凄いですね!もしかして不死川さんとお家で一緒に踊っているのかしら?」
「俺がそんなことすると思ってやがるなら考え改めろ……」