第22章 想いと約束
答えられない質問だ。
答えてしまえば今まで頑なに口を閉ざしていたことが無駄になってしまうから。
ただ実弥に問い掛けられてずっとダンマリを決め込むことはどうしても出来なかった。
「例えば……お館様や私が開戦に関係するとしても、実弥君が代わりになることは出来な……」
(あれ?私が鬼舞辻無惨に狙われてるなら、お館様と一緒に私が居ても問題ないんじゃないかな?……となるとお館様が身を以て足止めを敢行される時に……僭越ながら私がお体を運ばせていただき……うーん)
突然悩み出した風音を前に実弥は置き去りにされている。
だが表情が希望を見出したように爛々と輝き出したので、今までの経験から嫌な予感しか浮かばない。
実弥は視線を外した風音の顎に指を掛け、強制的に自分の方へと向かせた。
「おい、とんでもねぇこと考えてんじゃねェだろうなァ?変なこと考える前に俺の質問に答えやがれ」
「……あ、特に変なことは考えてなくて……あの……実弥君は何があっても代わりになることが出来ない。例えばお館様や私が開戦に関係があったとしても、代わりなんてないんだよ」
やはり返ってくるのは明言を避けた言葉だけ。
しかも明言を避けた返答でさえ誰かに何かが起こるとしても、実弥では代わりを務めることが出来ないとのことだ。
柱であるのに代わりを務められないという無情な現実に奥歯を噛み締めた。
(んだよ、クソが。何で俺じゃいけねェんだ!何で……俺は守りたい奴一人守れねェんだよ)
弱気なことを風音の前で言えない。
一人孤独に悩み続けている自分より年若い少女に、これ以上思い悩むものを与えてなるものかとの思いだけで、どうにか苛立ちや歯がゆさを押し込めた。
「そうかィ。はァ……風音、俺に話せる時になれば今考えてたことも包み隠さず打ち明けろ。返事は『はい』しか受け付けねェ」
「んうっ?!それは……その」
「返事ィ!」
「はいぃ!包み隠さずお話しします!お話しするから……実弥君、笑って?総力戦では実弥君だからこそ出来ることや、助けられる人がいるんだよ?実弥君がいなきゃ……誰か一人でも欠ければ鬼に勝てないんだよ」
少し伸びをした風音は実弥の頬に自らの頬をそっと触れさせ、背中をゆっくり撫でる。
まるで実弥の心の中を読み取り、その考えは違うのだというように。