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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


途端に体を熱くする風音に苦笑いを零し、狂薬学者なる少女の体を僅かに離し顔を覗き込んで本題に入る。

「女として扱うのは後日にしてやる。風音、お前がまだ稽古受けてねェの甘露寺と煉獄と時透だったなァ?胡蝶は研究に専念するっつってるし……あぁ、宇髄もか」

「うん。でも天元さんは鬼殺隊抜けちゃったから……実弥君と手合わせしないよね?」

ふわふわと微睡んでいた風音の表情が一気に急降下。
それと言うのも、天元と約束をしていたからだ。

天元も風音が自身の稽古に来てくれるのを嫁共々楽しみにしていると言っていた。

楽しみにしてくれていて楽しみにしていた稽古に赴けないのは風音にとって落ち込むには十分なものである。
もちろん実弥も二人の遣り取りを見聞きしていたので、風音が楽しみにしていたことを知っている。

「宇髄は戦に行かねェから俺たちとの手合わせ自体組み込まれてねェよ。ただ……戦の前の最後の会議の後なら付き合ってやれる。その会議でお前が何を話さなきゃなんねぇか……分かってんな?」

風音の表情が更に深い悲しみに包まれた。
呼吸は浅くなり体もそれに合わせるように小刻みに震えている。

決して忘れていたわけではないが、考えないようにはしていた。
お館様から声も掛かっていないので、まだ今は話す時ではないと胸の奥底にしまい込んでいたのだ。

だが決戦の日が刻一刻と近付きつつあるこの日、実弥の言葉によって否が応でも胸の奥から引き摺り出さなくてはならなくなった。

「それは……分かってるよ。でも柱の皆さん全員にお伝え出来るかは分からない。実弥君には伝えられるかもしれないけど……今の私ではそれすら判断出来ないから」

今になっても頑なに口を割らない。
しかも自分自身で判断出来ないとなると、考えうる開戦に関係する人物は一人しかいない。

「お館様の身に……何か起きんのか?」

風音は実弥に嘘を付けない。
だからと言ってこの件に関してはあくまで口を割る気はないようで、一切表情を変えず、ただただ実弥を見つめ続けるだけに留めた。

「はァ……万が一お館様の身に何か起きるとして、俺がお館様の代わりにそこにいることは出来んのか?」
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