第22章 想いと約束
風音の願い事。
一つ、しのぶと珠世との研究にはこれまで通りに参加
一つ、剣士たちへの柱稽古は続ける
一つ、実弥が他の柱と手合わせの際、可能ならば同行させて欲しい
本当に実弥の案を飲んだつもりなのか?
と思わざるを得ない風音の願い事に実弥のこめかみがピクピクと痙攣したが、毎日屋敷外に出ていた風音からの譲歩案を無闇矢鱈と退けることが出来なかった。
風音の譲歩案に対する実弥の返答
一つ、研究の件は必要不可欠なので許可(但し実弥同伴)
一つ、邸内での道場で行う稽古ならば許可
一つ、稽古をまだ受けていない柱の所への同行は許可
付け加えて一つ、眠る際は藤の花の香を焚くこと
という具合いに互いの意見を出し合い、実弥の返答を聞き入れた風音のこれからの処遇は決定した。
「全っ然納得してなかったじゃねェかァ。やけに聞き分けいいと思えば……ちゃっかりしてやがる」
ちゃっかりしている風音は現在、付け加えられた藤の花の香の代わりになる抽出液を寝る前に自室で鋭意製作中である。
つまるところ実弥は今一人で、なかなか帰ってこない風音を寝室で待ちながら昼間のことに考えを巡らせた。
「本部も柱の奴らも風音の処遇について異論なし……てか首根っこしっかり掴んどけとか……アイツどんだけ要注意人物と思われてんだァ?」
何かしら反対意見が出されるのではと思っていたが、むしろ実弥がしっかり風音の暴走を食い止めていろと言われてしまったのだ。
風音と共に任務についた柱たちを筆頭に、いつも怪我の治療をしているしのぶ、鬼舞辻の襲来時に戦闘姿を見た義勇、挙げ句の果てには様々な風音のやらかしを耳に入れていた行冥にまで鴉を通して言われる始末。
「嫌われてねェのが不思議でならねェ……普通なら関わんのすら嫌がられる所業だぞ。悲鳴嶼さんにまで釘刺される女とか……」
ちなみに風音に柱たちからの返答を伝えたところ
『……実弥君、首根っこをしっかり掴んでてね!次はないように思うから』
ガクガク震えながら言うものだから吹き出しそうになった。
まぁ、本人からすればやらかしているつもりはないので、加減が分からず戦々恐々としているようである。