第22章 想いと約束
今の状況が決して鬼殺隊にとって不利に働くものだけではないと伝えるような穏やかな実弥の声音。
放っておくとすぐに心配事や罪悪感を背負い込む風音が思い悩まず、涙を零さないようにとふわりと肩を抱き寄せて胸元におさめる。
「戦が終わるまで風音が一番不便を感じるだろ。一人で外にすら出られねェ、稽古つけてもらいたくても他の柱の所に行くことさえ許されねェ。それでも……俺はお前をこの手で守ってやりてェ。他の奴らんとこで他の奴らに守られるくらいなら、この家にいろよ」
今まで上弦の鬼が出ると分かっていても、側で戦ってやれたのは刀鍛冶の里だけだった。
いくら側で支えてやりたいと思っても、柱として与えられた任務を蔑ろにしてまで駆け付けるなど言語道断。
気が付けば上弦の鬼と戦って重傷を負い涙を流す風音を見る度、どうしてこうも上手くいかないのかと胸を締め付けられた。
それが今回は風音が一番好きだと言ってくれている実弥がいる家で、それこそ四六時中そばに居て守ることが出来る。
柱の一人である風音に対して褒められた行動ではないかもしれないが、どうしても失いたくないという想いからこの家の中に縛り付けることを選んでしまった。
どんな返答が風音から返ってくるか……固唾を飲んで待っていると、思いの外穏やかな表情でヒョコと顔を実弥に向けてきた。
「ありがとう。私は誰よりも尊敬し信頼する実弥君の指示に従うよ。確かに他の柱の皆さんのお稽古にいけないのは……残念だけど、私を誰より知ってくれている実弥君が側にいてくれるのが、私にとって一番安心出来ることだから」
「そうかィ……こういうことに対して普段は聞く耳持たねぇから、反発されると思ったんだがなァ。ここにきて素直に受け入れんのかよ」
顔の横でふわふわと揺れる金色の髪を耳に掛けてやりそのまま頭を撫でると、それが心地いいと分かるほどに柔らかな表情となった。
「フフッ、実弥君の中で私はすっかり頑固者だね。私はね、実弥君が懸命に考えてくれた今の答えを覆せるほどの対応策を持ち合わせてないもの。あ、でも幾つか聞いて欲しいお願いがあるの!」
柔らかな表情はどこへやら……
キリッと目尻を上げた風音の願いを実弥は渋々ながら受け入れることとなる。