第22章 想いと約束
どうやら風音の心配事の一つは杞憂に終わりそうだ。
そもそも遅かれ早かれこういった事態が訪れるだろうということは、実弥のみならず柱やお館様も承知の上。
言い方は悪いが風音に引き寄せられて鬼が奇襲を掛けてこようが、柱としては願ってもない事態だ。
十二鬼月と遭遇出来る確率は極めて低く、戦力を削ぎ落としたいと願っていても遭遇しなければそれも叶わない。
それが総力戦も近くなったこの日を以て、風音が無事に居てくれるだけで十二鬼月との遭遇率が上がる。
そんな思いがある故に義勇は理解出来なかった。
風音が涙を堪えるまでに気を落とす理由が……
「不死川、風音が泣きそうになっている。俺は席を外すのでどうにかしてやれ」
涙を堪える風音がどうすれば気を持ち直してくれるのか分からない。
もう名前を呼ばせるという手は使ってしまったので、これ以上思い浮かばない義勇は眉を下げて立ち上がった。
「おいコラ、手持ち無沙汰で呆然と家ん中彷徨くんじゃねェぞ。お前も曲がりなりにも柱なら、目玉を見た玄弥や竈門に事情話しとけ。竈門はテメェの弟弟子だろうが。面倒みとけェ」
「……善処する」
一瞬悩んだように間が空いたが、この際気にしないことにした。
善処すると言ったからには義勇なりに炭治郎たちに事情を説明するだろうから……
そうして義勇が部屋から立ち退いたのを確認すると、大人しく頬を摘まれたままでいる風音の体をくるりと反転させた。
「何でお前が泣きそうになってんだよ」
「義勇さんが言ってくれたことも理解出来るんだけど……私のせいで鬼殺隊の誰かの命が危険にさらされるかもしれない……からです」
「総力戦が近いってのに、わざわざ柱んとこに鬼をけしかけてきやしねェよ。鬼共の根城で俺らは戦うんだぞ?鬼からすればそんな有利な状況を捨ててまで、危険を冒して外で鬼殺隊襲うとは考えらんねェ。お前を匿うのは念の為だ」