第22章 想いと約束
炭治郎が現れる少し前、風音は義勇に願われ首元に包帯を巻き付けていた。
「お待たせしました!義勇さん、少し分からないことがあるんです。義勇さんがこうして動いた時ーー」
「……それは足を前に出してーー」
怪我が見えなくなることにより憂いの軽減した義勇は真面目な風音へと丁寧に体を使いながら答えている。
その動きを目と頭に焼き付け何度も自身の中で反芻させて、コツが掴めた頃合いで再び義勇と向かい合い木刀を構えた。
「よろしくお願いいたします!いきます……夙の呼吸 陸ノ型 紗夜嵐!」
「水の呼吸ーー」
柔らかな風が巻き起こり水がその風を捉えるかと思われた瞬間、激しい風によって全てが相殺され、気が付けば風音の体がふわりと抱え上げられていた。
「あ、あれ?実弥君、どうしたの?お稽古中にわぶっ?!」
キョトンとする風音の頭に布が被せられ、視界は瞬く間に真っ暗闇となる。
驚きから固まり続ける風音を抱えたまま、ポカンとしている義勇に視線だけで歩くよう促した。
「事情は後で説明してやる。冨岡も一旦俺の家に戻んぞォ」
風音の姿を隠し自邸に戻る理由など想像に容易い。
義勇は緩んでいた表情を瞬時に引き締めて、先を走る実弥の後を追った。
そうして辿り着いた不死川邸のとある一室。
剣士たちがいない部屋の中で風音はようやく暗闇から開放された。
実弥が頭から被せたのは羽織だったらしく、暗闇から開放された風音の視界に一番に飛び込んできたのは、袖のない隊服を身にまとい表情を険しくした実弥だった。
「実弥君……大丈夫?一体何が……」
「風音。お前、出来る限り家から出んなァ。夜はもちろん昼間も一人で出歩くな。外に用あんなら俺が付き添ってやる」
異論を許さない強い口調に風音はある程度事情を察し、畳に視線を落として瞳を悲しげに揺らす。
「鬼が……動き出しちゃったんだね」
「あぁ。正確には鬼の分身みたいなもんだが、それが葉の影に隠れていやがった。目ん玉みたいな形状だったんでなァ……恐らくその目ん玉通して鬼側に鬼殺隊の情報を集約させてんだろ」