第22章 想いと約束
「厳しいどころの話じゃないでしょ?!血反吐吐いて気絶するまで休憩なしだよ?!辛すぎて不死川さんが目を離した隙に、ヤモリみたいに塀をよじ登ってここまで……助けて!」
助けてやりたい気持ちは山々だが、実弥の稽古のやり方に口を出すなど出来ない。
それぞれの柱がそれぞれの考えで稽古を組んでいるので、無駄なことは一切行っていないと知っているからだ。
そして既視感の覚える遣り取りをしているということは……再び既視感の覚える出来事がすぐに起こるということ。
地面に崩れ落ちた善逸と視線を合わせるためにしゃがみこみ、背を撫でつつ不死川邸に意識を向けながら元気付ける。
「今は辛いと思いますが、一緒に頑張りましょう?実弥君も無闇矢鱈と厳しくはしていないんです。皆さんに生き残って欲しい、鬼の居なくなった世界で穏やかに過ごして欲しいって思ってるからこそ……あ……」
意識を向けていた不死川邸の門から一人の青年が姿を現し、土埃を巻き上げながら物凄い勢いで走りよって来た。
誰かなど確認するまでもなく……目を血走らせ血管を額から頬にまで浮き上がらせながら怒り狂っている実弥である。
「どいつもこいつも女に甘えやがってェ……おォい、稽古に戻るか俺に殺されるか選べェェエ!」
実弥の怒り狂った顔と言葉に善逸は形容し難い叫び声を上げ、実弥に首元を掴まれる前に風音の背後へと姿を隠した。
「聞こえなかったかァア?!稽古に戻るか殺されるか……どっちだって聞いてんだよ!」
「ど、どっちもイヤだぁぁあ!情け容赦ないじゃん!俺、さっき血反吐吐いたんですよ?!風音ちゃん……どうにかしてよぉ……」
善逸に助けを求められたことにより、実弥の鋭い視線が風音に向けられてしまった。
かと言って恐怖を覚えることはないのだが、鋭い視線を向けられ続けてしまうと悲しくなるし、居心地も悪い。
どうしたものかと悩みながらクルリと体を反転し、落ち着くようにと頭を撫で撫で。
「実弥君は優しいんです。総力戦で死んで欲しくないからこそ、厳しいお稽古を付けてくれています。それに励ましてくれる炭治郎さんや伊之助さんが一緒なのでは?誰が一番に実弥君のお稽古を突破出来るのか、競争してみましょうよ!」