第22章 想いと約束
結果。
風音の木刀は真っ二つに折れ、義勇の木刀はささくれ立ったところで手合わせは終了した。
そして現在は不死川邸へと二人で帰っているところだ。
「……どなたにも勝てません。先を見てるのに……冨岡さんにも先を送っていると言えど、私の方が断然有利なはずなのに……勝てない」
とぼとぼ歩く風音をどう元気付けてあげればいいのか。
実弥や他の柱たちならば笑顔にしてやれる言葉を掛けられるのだろうが、残念ながら口下手な義勇は戸惑うだけ。
「足手まといになりたくない……せめて木刀折らないようにしないと」
しょんぼりする風音に義勇もしょんぼり。
何か笑顔にする方法はないか……
何か喜ぶことはないか……としょんぼりとする思考の中で必死に考えた結果、一つだけ義勇にも出来そうなことが思いついた。
「風音、俺のことも名前で呼べばいい」
過去に何度か目にした光景の中で風音が喜んでいたこと。
名前で呼び合うことが幸せだと笑顔になっていた。
それを思い出し口に出したのだが、話の脈絡が繋がっていなかったからか風音はキョトンとしている。
「あ……いや、気に入らなければ今のままでも構わない。冨岡のままでも……」
「気に入らないなんて!いいんですか?!わぁ!嬉しい!では……義勇さん、と呼ばせていただきます。義勇さん、ありがとうございます」
本当に笑顔になった。
キョトンとされた時はどうしようかと思ったが、パッと明るい笑顔になった風音を目にすると、途端に胸の中が安堵で満たされた。
「礼には及ばない。例外はいるものの、不死川も他の柱たちも風音より長く鬼狩りをしている。焦る必要はない」
義勇の精一杯の励ましの言葉に風音の心は暖かなもので満たされ、更に笑顔が深まる。
「はい!腐らず日々努力を続けます!義勇さん、今日のお夕食は鮭大根……」
「風音ちゃんーー!助け……助けて!干からびて死んじゃう!血反吐吐いて死んじゃう、殺される!」
あと少しで実弥の待つお家へと到着する……というところで、既視感の覚える出来事が起こった。
「善逸さん?!もしかして……実弥君のお稽古が厳しくてここまで?」