第22章 想いと約束
「風音はどのようにして不死川と仲を深めた?」
「夙の呼……え?!」
風音の稽古場である場所で義勇と手合わせを再開しようと構えた途端、義勇の口から飛び出してきたのは呼吸の技名ではなく、実弥と仲良くなる方法を知りたいとの言葉だった。
義勇はやはり実弥と仲良くなりたかったのだと今の質問で確信した風音は、構えていた木刀を下に下ろし出会いから今までを頭に巡らす。
「後から分かったことなんですけど、私、実弥君に一目惚れしてたんです。だから……その、実弥君への好き好きって気持ちが漏れ出てたから……仲良くなれたのかなって。冨岡さんも実弥君に好きだって気持ちを伝えれば、仲良くなれると思います!」
「好き……ではこれを渡せば仲良くなれるだろうか?」
ゴソゴソとおもむろに羽織の中から義勇が取り出したのは見覚えのある甘味屋の包み。
慣れない街へ繰り出してまで求めたものは、実弥に渡すための甘味だったらしい。
その健気さが風音の琴線に触れ、胸がキュンと鳴る。
「喜んで受け取って貰えると思いますよ!私がお茶を用意しますので、お二人でお話ししながら召し上がるのもいいかもしれません!」
「茶か……手間をかけるがよろしく頼む」
実弥のいない所でどんどん話が進み、終着点は実弥と義勇が二人きりでお茶を飲みかわしながら甘味をいただく……
果たしてこの二人が思っているように上手くいくのかは不明だが、風音の出した案ならば非常事態には陥らないはず……である。
「では冨岡さん、甘味は私の鞄の中に待避させておきましょう。手合わせの続きをお願いします!冨岡さんの流麗な動きをどうにか看破させてください!」
差し出された風音の手の上に甘味をちょんと手渡すと、義勇は小さく頷いて腰から木刀を抜き出した。
「流麗……なのか?不死川の動きの方が流麗だと思うが」
小さな義勇の呟きは鞄の中に甘味を退避させている風音の耳には届いていない。
しかし返事はなくとも心から言ってくれているのだと伝わるくらいに真っ直ぐな目をしていた。
「流麗……期待に応えてやらなくては」
風音の一言により、ひっそり義勇からの手合わせが本気度を増した。