第22章 想いと約束
義勇探しに飛び出しそうだった風音を実弥が引き止めていると、二人にとって聞き覚えのある声が玄関から聞こえてきた。
口には出さないもののいつ来るかいつ来るかと実弥がひっそり待っていた人物である。
しかし口に出さずとも態度には出るというもの。
その証拠に実弥の背筋がヒョイと伸びた。
実弥の無意識の反応に風音は笑みを浮かべて手を差し出す。
「実弥君!玄弥さんがいらっしゃったよ!お迎えに行こう!」
「俺はいい……って引っ張んなァ!分かった、分かったから落ち着け」
気恥しさからか玄関に向かいたがらない実弥の手を強制的に掴み取ってグイグイ引っ張ると、観念したように立ち上がり引っ張られるまま風音の後ろを顔を僅かに赤くしながら着いていく。
「玄弥さんに会えるの久々だね!……あれ……」
意気揚々と実弥の手を引っ張り歩いていたかと思えば突然立ち止まった。
「何だァ?」
「もしかして私ってお邪魔じゃない?!兄弟水入らずの時間なのに私がいたら遠慮しちゃうんじゃ……私、やっぱりお部屋でうぇっ?!」
百面相を繰り広げた後に今来た廊下を辿ろうとする風音の肩をガッチリと掴んだ。
「俺を一人で行かせる気かァ?!別に水入らずも何も、アイツは俺ら二人を訪ねてきたろ?!馬鹿なこと言ってねェで行くぞ!」
危うく一人ぼっちにされそうになった実弥は無事に風音の捕獲に成功し、未だに戸惑い眉を下げる風音の手を掴んで引っ張り歩く。
そうしてそのまま玄関が見えるところまで来ると、サチにお出迎えしてもらい笑顔でふわふわなお腹を撫でてやっている玄弥と……その傍らで固まっている義勇が二人の瞳に映し出された。
「あ!こんにちは!今日から稽古お願いします!」
玄弥がいることは声を聞いた時から分かっていたのだが、二人が気になって仕方がないのがシュンとした表情で固まり続けている義勇の存在だ。
玄弥に言葉を返したいのに恥ずかしく、義勇には触れたくない実弥は黙り込む。
やはりここはよくお口の動く風音の出番だ。
「こんにちは!こちらこそよろしくお願いします!玄弥さん、冨岡さんが落ち込んでいらっしゃるように見えるのですが……何かありましたか?」
「あぁ……何か道に迷ってたみたい。甘味屋の前で固まってるの見つけて、ここまで一緒に来たんだよ」