第22章 想いと約束
実弥が不本意に思う中、どうにか義勇は実弥に怒鳴られることなく不死川邸へと到着した。
と言うのも風音が二人の間に鎮座し、独り言のようなそうでないような会話を繰り広げ、それに相槌を打つなり返事をするだけで間が持ったからだが……
そして屋敷に到着するといつも通り風音と実弥がサチの熱烈歓迎を受け、その間義勇は玄関にすら近寄らず門の外側から様子を伺っていたらしい。
「サチ抱っこしてれば冨岡近付いてこねェんじゃねェかァ?」
「それはそうかもしれないけど、冨岡さんは実弥君と仲良くなりたいんじゃないかな?てちてちって実弥君の後を追い掛けてたもん!男の人に言ったら失礼かもしれないけど、少し幼くて可愛いよね」
現在、稽古や手合わせ途中の休憩時間。
剣士たちは実弥の変わらぬ厳しい稽古の疲れを癒そうと、全力で部屋で眠っている。
元気の残っているものは稽古再開の時間まで好きに過ごしているので、小腹を満たしたりしている者もいる。
そんな中で風音に可愛いと思われている義勇は、何故か商店の立ち並ぶ所へ赴き、まだ帰ってきてはいない。
「全然可愛くねェ!考えてみろよ、男の後を男が無表情無言で着いてくんだぞ……怒鳴りたくもなると思わねェかァ?」
「うーん……私は蜜璃ちゃんやしのぶちゃんがずっと着いてきてくれたら、嬉しさのあまり抱きついちゃうけどなぁ。あ、実弥君が着いてきてくれても抱きついちゃうよ?」
実弥が言いたいことはそうではないのだろう。
しかしそれをどう伝えれば風音に分かってもらえるのかが分からず……もういいやと諦めた。
「そうかィ……まァ俺がお前の後ろを無表情無言でついて回ることはねェけど。……てか冨岡遅ぇなァ!まさか道に迷ってんじゃ……どうでもいいか」
そして義勇の所在を知ることも諦めてしまった。
実弥からすればどうでもよくても風音からすればどうでもよくない。
迷子になっていては大変だと勢いよく立ち上がった。
「迷子になってたら可哀想だよ!ちょっと様子を見てくる!実弥君は冨岡さんが帰ってきた時のためにお家で待っててね!」
「待て待てェ……大人の男が迷子なんてある訳ねェだろ?!ガキじゃあるまいし……」
「こんにちは!兄ちゃ……じゃなかった、風柱様、夙柱様!ご在宅ですか?」