第21章 藤の花と全貌
「すみません!驚くくらいの眠気に勝てませんでした!しかもお話を遮ってしまって。えっと……私がここにいても問題ありませんか?」
飛び起きたかと思えば即座に正座をして縮こまってしまった。
寝起きとは思えない余りに機敏な動きに全員がキョトンとなった後、実弥は笑顔で頭をポンと撫で、天元は再び笑い、義勇はキョトンとしたまま。
「問題ねェもなんも、この部屋は俺らが泊まる部屋だろ。ちょうどコイツら帰るとこだったんでなァ、見送んぞ」
「え?!俺ら帰るとこだったっけ?……あぁ、うそうそ、冗談だって!邪魔者はさっさと退散するわ」
視線だけで帰れと無言の圧力を受けた天元と義勇は立ち上がったのだが、ニコニコと笑いながら実弥と立ち上がろうとしていた風音の瞳を見つめる。
「帰る前に。嬢ちゃん、あんま無理すんなよ?あと……不死川のこと好きか?」
心配してくれているからこそ掛けてくれた言葉、聞かれた質問の両方に風音は迷いなく頷いた。
「ご心配ありがとうございます!無理はしてません!あと実弥君のことは出会った日から今日までで一番大好きです!死ぬまで好きな気持ちは鰻登りですよ?」
照れる素振りは皆無。
実弥に隣りで真っ赤になられようが義勇に生暖かい視線を送られようが、天元に吹き出されようが風音は平常運転。
義勇の言った通り風音にとって実弥は酷い願いをする輩ではなく、日々好きな気持ちが鰻登りになる愛しい人のようだ。
「どこが好きかと言いますと、まずは優しいところでしょ?後はふわって目尻が優しく下がる笑顔に暖かくてホッとする手に……ゔっ」
誰も聞いていないのに実弥の好きなところを興奮気味に発する風音のよく動くお口は、実弥の手によって強制閉門と相成った。
「もういい……お前の口にしてることはお前が思ってる以上に全員知ってっから……これ以上やめろォ」
まだ何か言おうと実弥の手の内側でモゴモゴ動くお口がようやくピタリと静止したが、代わりに嬉しそうに満面の笑みになるものだから実弥の赤面は留まることを知らない。
「ブハッ!不死川らしくねぇなぁ!顔真っ赤!おぉ、怖ぇ怖ェ。怒鳴られる前にとんずらすっか!おい冨岡、帰るぞ……ってお前、何でまた座り直してんの?」