第21章 藤の花と全貌
「……テメェらァ、いつまでここにいんだよ!コイツ起きちまうだろうが!」
本日の会議が終了し夜も深けたため、実弥は眠そうな風音の手を引いて、お馴染みの金魚の街の宿屋へと身を寄せたのだが……
いつもの如く何故か誰かが着いてきてしまう。
天元はいつも通りとして、今日に限ってはこれまた何故か義勇がお供である。
「お前の声が一番デッケェっつーの。見てみろ、冨岡なんて一切喋ってねぇぞ」
「…………」
「質問に答えねぇし冨岡は喋りやがらねェ……用ないなら帰れよ」
可笑しそうに笑う天元と無表情の義勇。
そんな二人を前に出てくるのは溜め息ばかりだ。
宿屋の部屋に到着し暫くは風音も眠い目をこすりながら、懸命に起きて三人と話していた。
しかしほぼ一日中先を見た上に吐血し、腕相撲ではしゃぎ、果てには泣いてしまったため睡魔は逃げ出してくれなかったのだ。
眠いなら寝ろと言ったら実弥の肩にしな垂れ掛かって眠ってしまったので、少し騒がしいこの部屋を離れ別室を借り受けたいところであるが、動くに動けない状態である。
「それにしても嬢ちゃん、その体勢辛くねぇの?不死川の腕とか肩とか筋肉ガチガチで柔らかく無さそうなのに……」
「少なくとも布団よりは居心地良くねぇだろうよ。…… 風音、寝るんなら布団で寝ろ、風邪引くぞ」
呼び掛ける声に僅かに反応した風音は身動ぎして薄く目を開き、実弥の顔を夢現な表情で見つめ……コテンと実弥の膝に頭を預けて再び夢の中へと旅立った。
「不死川……よく襲わねぇでいられるな。俺、嫁にこんなのされたら襲う自信しかねぇ」
「コイツの前で下世話な話すんなァ。てかカミさんにもなってねぇ女に軽々しく手ェ出せるわけねェだろ」
実弥は起きる気配の全くない風音が風邪を引かぬよう、自らの羽織を肩に被せてやる。
そしてやはり身動ぎ一つしない風音の髪をそっと撫で、そのまま流れるような動きで簪を外してやり、団子に結ばれていた髪も解いて背中へと流した。
「不死川は柊木が大切なのだな。まるで……まるで姉の様だ」
唐突に実弥を姉のようだと言ってのけてしまった義勇に実弥は怒り心頭。