第21章 藤の花と全貌
数十分後。
無事に目を覚ました風音は実弥に引っ張られ、皆が待機してくれている部屋へと続く廊下を歩いていた。
「結構長い時間寝ちゃった。皆さん大丈夫かな?待ちくたびれてなければいいのだけれど」
「たかが数十分大したことねェよ。……なんか騒がしくねェかァ?嫌な予感がするんだが」
部屋に近付くにつれ、賑やかで楽しげな声が大きくなっていく。
本部内で賑やかに出来る者は限られており、まず間違いなく柱たちと思われる。
「楽しそうな声!ん?何かに打ち付けるような音と……歓声?なんだろ?カルタか何かしてるのかな?」
「カルタにしちゃあ音デカすぎだろォ……あ"ぁ"、俺は何となく分かったかもしんねェ」
実弥の表情はゲンナリしているように見えるが、何となくうずうずと興奮気味に速足になったので、柱たちが催している何かに参加したそうに風音には映った。
そうなってくると風音は気になるというもの。
引っ張られている手を強く握り締め、今度は風音が実弥の前に飛び出して更に速足で声のする方へ足を進めた。
「急ぐ必要ねェって!転んじまうぞ!」
「大丈夫!っと、ここのお部屋だ!皆さん、お待たせしました!体調万全の柊木と実弥君、ぜひ皆さんの催しに参加させて下さい!」
スパーン
と襖を開けた先に見えたのは、卓袱台を挟んで杏寿郎と天元が互いの手を握り締め、血管を顔と腕に浮き上がらせている姿だった。
「あ!風音ちゃん!お帰りなさい!体調落ち着いたのかしら?それなら風音ちゃんや不死川さんも参加しようよ!今ね、腕相撲大会してるのよ!」
風音の姿を見てすかさず走りよって来てくれたのは蜜璃だ。
何だか楽しそうな恐ろしそうな催しに参加はしたいが、腕相撲など力がものを言う勝負に縁のなかった風音は首を傾げる。
「ぜひ!でも腕相撲ってどうすればいいんですか?」
「見たまんまだァ。相手の手を力のみで卓袱台に捩じ伏せれば勝ち、反対に捩じ伏せられたら負け。ほら、ちょうど勝敗つくぞ。見とけ」
実弥に説明してもらい対戦中の二人に目を遣ると、杏寿郎が頬に痣を浮き上がらせながら天元の手を卓袱台に押し倒し、嬉しそうに飛び上がる姿が瞳いっぱいに映し出された。