第21章 藤の花と全貌
そうして実弥が借りていてくれた風音が体を休めるための部屋には柱全員が勢揃いしていた。
実弥もそのことはもちろん知らなかったので、襖を開けた時に風音と共に肩をびくつかせた。
「ごめんね!不死川さんと二人の方が風音ちゃんも休めると思ったんだけど、どうしても風音ちゃんのことが心配で。伊黒さんにお願いしてここに連れてきてもらったの」
予想外の展開に呆然とする実弥の横にちょこんと座っている風音の手を握るのは蜜璃。
薄い緑色の大きく可愛らしい瞳は涙が浮かんでいるので、言葉通り風音のことが心底心配でこの部屋まで駆けつけてくれたらしい。
「嬉しい!さっきのは私が気を逸らせたから招いた事態なのに……こうして来て下さるのは凄く嬉しいです。大好きな皆さんに心配してもらうのは申し訳ないですが、本当に嬉しい」
心のままに大好きだと伝える風音の周りには自然と一人また一人と集まり、いつの間にか二人の前に全員が腰を落ち着けている。
「不死川と生活してんのに、嬢ちゃんは変わらねぇな!大好きだって笑顔で言われるとつい構いたくなっちまう!」
天元の大きな手は風音の頭を優しく滑り、それを皮切りに次々と手が伸ばされてくる。
「あんまり構いすぎると不死川さんが怒っちゃうよ?」
「時透の言う通りだ!宇髄の言っていることも頷けるが、構いすぎると不死川に悪い。それに風音の体にも良くないだろう。座っていて辛くはないか?」
「ごめんなさいね、風音ちゃん。不死川さんと二人きりの方がゆっくり出来ると理解はしているのですが……どうしても心配で」
誰も彼もが実弥の話題を盛り込んでくる。
今の状況にただ呆然としていた実弥の額には血管が徐々に浮き上がり、眼光は鋭くなっていく。
「テメェらァ……言葉と行動が伴ってねェんじゃねェかァ?!俺はコイツ休ませるために部屋借りてんだぞ!それ分かってんなら……」
視線を感じそちらに意識を向けると、皆に囲まれ頭や頬を撫でられてニコニコと微笑んでいる風音がいた。
「実弥君、嬉しいね。疲れが吹き飛んじゃうくらい嬉しい。皆さんも柱稽古や痣のことで色々悩んでるはずなのに、こうして私や実弥君を心配して駆け付けてくれるんだもん」