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涼風の残響【鬼滅の刃】

第21章 藤の花と全貌


しのぶが薬を二人に託し日々塗り続け、傷痕が少し薄くなったかな?と感じ始めた頃、風音は実弥と共に本部の庭に植えられている藤の木の下に佇み花を眺めていた。

風音の顔は青ざめており、真一文字に結ばれた口元は顔色とは対照的に薄く赤に染まっている。

「本当に痛みはねェんだな?」

「うん、今は大丈夫。鬼に付けられたり先を見て付いた傷はすぐ治っちゃうみたいだから」

互いに互いへ向き直った際に実弥の瞳に映ったのは微笑んでいるはずなのに悲しそうな表情だった。
それが堪らず実弥は手を伸ばし口元を赤く染めているものを親指で優しく拭い取る。

「血ィ吐いたくせに大丈夫なわけあるか。体に障る、宿……に戻るの嫌なら部屋借りんぞ」

本日は柱合会議だった。
それぞれの稽古の進捗状況や以前に見た総力戦を踏まえての作戦会議、そして実弥、無一郎、行冥を除く柱数名の総力戦時の戦闘光景を見る日。

今し方見たのはしのぶの戦闘。
本人が言ったような最期、加えて見えたのはそれに至るまでの壮絶な戦闘だった。
つまり風音が吐血するまでの傷を負っていたことになる。

「ありがとう。じゃあお部屋を借りて少し休憩しよかな。実弥君も一緒に居てくれる?」

「当たり前だろォ……今一緒にいんのにわざわざお前を部屋に届けてどっか行ったりしねェ。ったく、胡蝶本人はあっけらかんとしてんのに、お前が落ち込んでてどうすんだよ」

風音にとって宝物である柱が傷付き散っていく様は、まだ現実になっていないことだと分かっていても風音の心を深く抉る。
もちろん柱や天元も心を痛めているが、その場で気持ちを切り替え対抗策を考えられている。

風音もその場では取り繕って話し合いに参加しているが、こうして実弥と二人きりになると気が緩み、涙が出そうなほどに目の奥にツンとした痛みが走ってしまうのだ。

その痛みを癒すように、実弥が口元に添えたままにしてくれている手に自らの手を重ね合わせ、頬をそこに擦り寄せた。

「うん。私が早く気持ちを切り替えないと、次に進めなくなってしまうよね。次は冨岡さんの先を見るんだし……よし!実弥君のあったかさで持ち直した!お部屋に行こ!」
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