第21章 藤の花と全貌
「ではお言葉に甘えさせていただきます。実は傷痕を薄くするお薬を偶然持参しているので、お二人には被験者となっていただきましょうか」
本当に偶然なのかはさて置き、腕が傷痕だらけの風音と全身傷痕だらけの実弥はよい被験者になることは間違いない。
二人共が傷痕については特に気にしていなかったが、せっかくしのぶが開発してくれた薬を無下に出来るわけもないので、その申し出を快く受け入れた。
「被験者になるにはうってつけの二人ですね!では夜ご飯を食べてお風呂に入ったら試してみましょう!さぁ、実弥君のお家に帰りましょ!しのぶちゃん、実弥君の作ってくれるご飯は凄く美味しいんですよ!お食事処開けそうなくらいに!」
「あら、そうなのですか?それは楽しみですね。お食事処が開けそうな不死川さんの手料理」
「お前ら好き勝手言ってんじゃねェ。別に普通だろうが……馬鹿言ってねェでさっさと帰るぞ」
相変わらずよく動くお口を持つ風音の手を引っ張り歩くと、元々風音と手を繋いでいたしのぶも自然と引っ張られ、三人仲良く不死川邸への道を歩くこととなった。
(恥ずかしがり屋の不死川さん自ら風音ちゃんの手を握るんですね。穏やかになられているようで何よりです)
心の中でしのぶが呟いた言葉はもちろん二人には届いていない。
「しのぶちゃん、一つお聞きしてもいいですか?」
「えぇ、構いませんよ」
あれから不死川邸にて剣士たちも混じえて実弥作の夕餉に舌鼓を打ち、現在風音としのぶは仲良く二人で風呂に浸かっている。
互いに普通の声量だが風呂場ということで、いつもより声が響きよく聞こえる。
そんな中で風音は湯の中で手をギュッと握り締め、ぽつりぽつりとしのぶに問い掛け出した。
「私の血は本当に人に害を及ぼさないんでしょうか?鬼と言えど元々人だった鬼……しかも上弦の鬼にも効力を発揮するくらい猛毒でしょ?一人で生きていくなら問題ないですが、その……年月が経過して実弥君や他の人たちに害になるなら……嫌だなって」