• テキストサイズ

涼風の残響【鬼滅の刃】

第21章 藤の花と全貌


しのぶの気持ちも勿論理解出来るが、風音は禰豆子と言う可愛らしくも人のために鬼と戦っている鬼を信頼している。

そしてあと1つ、抵抗を示さない理由がある。

「私は鬼でも鬼と戦う禰豆子さんをしっています。それにこうしてしのぶちゃんと研究をされているのならば、私にとって嫌煙する人の枠から外れるんです。しのぶちゃんは私の尊敬する方ですから」

青年にも言った通り柱や天元は風音が目指すべき存在であり、背を追い続けている存在だ。
実弥を含め他の柱や天元が現状を知らないとしても、柱の一人であるしのぶが認めた者ならば風音にとって仲間も同然。

嘘偽りの全く映していない穏やかに弧を描いた瞳に、珠世は風音が頬を赤く染めるほど綺麗な笑顔を見せてくれた。

「た、珠世さん!すごくお綺麗ですね!思わず見蕩れてしまいました!目眩を起こして……」

パシッ

と珠世を握っていた手が叩き落とされた。
誰になど確認する必要も無い。
目の前に鬼の形相で風音を睨み付け、珠世を守るように立ちはだかる愈史郎がいたからだ。

「珠世様の手をいつまでも握っているな醜女め!珠世様がお美しいのは当たり前のことだろ!お前のような低脳な醜女が」

「愈史郎!やめなさい!」

「はい!珠世様!」

不思議な遣り取りにポカンとしていると、しのぶが頭を優しく撫でてくれた。

「愈史郎さんはお口のお行儀が悪いんです。大変優秀な方ですがそこだけが玉に瑕……大丈夫、風音ちゃんは可愛らしいですし、愈史郎さんに負けず劣らず優秀ですから。後で叱っておきますね」

頭を撫でてくれる手の力や表情はとても柔らかで綺麗なのに、額には血管が浮き上がっている。
実弥でよく見る浮き具合から判断するに怒りは大きいようだ。

今から共に研究をと言う時に自分で揉め事が起こっては大変だと、風音は首を左右に振った。

「気にしていません!しのぶちゃんや実弥君が可愛らしいって言ってくれるだけで私は幸せなので。それにこの中で頭脳が一番劣っている自覚ありますから!能力が劣る分、血で名誉挽回出来ればと!」

気合十分に羽織の袖を捲り上げて力こぶを見せると……珠世と愈史郎はギョッと目を見開いた。

袖のない隊服から覗く白い腕に、無数の傷痕が残っていたからだ。
/ 985ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp