第21章 藤の花と全貌
青年の笑顔が扉の向こう側へと消えた後、振り返った風音の目に飛び込んで来たのは、今日会う約束をしていたしのぶとあと2人。
見覚えのない美しい女性と、その女性に寄り添う凛々しい少年。
しかし風音の目にはどうしても人に見えず、戸惑ってしのぶを見つめると、双方の間に入り事情を説明してくれた。
「こんにちは、風音ちゃん。お待ちしていました。ご紹介しますね、こちらの女性は毒薬の研究を共に進めている珠世さん。そしてその助手の愈史郎さんです。もうお気付きだと思いますがお二人とも鬼です」
やはり風音の思った通り人ではなく鬼だった。
そう判断したのは瞳孔が猫のように縦長であったから。
何がどうなって鬼と研究を進めているのか判断できないが、本部内にて研究を進めているのであれば本部公認という事だ。
それならば自分が異を唱える必要はないと、まずはしのぶの手を握って頭を下げる。
「そうでしたか。しのぶちゃん、遅くなり申し訳ございません。今日から週に一日程度になりますが、お力になれるよう知識を振り絞りますので、よろしくお願いいたします」
笑顔で挨拶をするとしのぶも優しい笑顔で返してくれた。
その笑顔に癒されつつも、いつまでも手を握り締め続けるわけにはいかないので、その手を離して今度は珠世と呼ばれた鬼の手を握る。
「珠世さん、初めまして、柊木風音です。研究を共にという事は私の血や能力の性質は既にご存知だと思っております。これらを活用して戦いに挑む所存ですので、どうぞ珠代さんのお力をお貸しください」
しのぶに向けていた笑顔のまま協力を願いでると、しのぶのような笑顔は帰って来ず、驚きの表情となってしまった。
その理由が分からず首を傾げた風音に、珠世は返事することを思い出したように言葉を発した。
「しのぶさんから……お話は伺っております。それより風音さん、鬼の私たちを嫌煙されないのですか?鬼殺隊は鬼を倒す組織なのに」
珠世の視線がチラとしのぶを捕える。
つまりしのぶは少なからず鬼である珠世たちとの共同研究に難色を示したのだろう。
そして今もしのぶから漂っている張り詰めた雰囲気から、本意ではないのだと雄弁に語っている。