第21章 藤の花と全貌
青年はニコリと笑顔で頷き、まるで自分の屋敷に招くかのように風音を本部の中へと促して庭を歩き出した。
その隣りに慌てて追い付き青年を見上げる。
「今日賜ったんです。で、そろそろ帰ろうかと黒子みたいな人を探してたら、姐さんや兄さんと同じ洋服来たお嬢さん……胡蝶さんを見付けて。姐さんのこと知ってるかなって聞いたら、もうすぐここに来るって言うじゃないですか。それなら俺に迎えに行かせてほしいってお願いしたんですよ」
すごく丸くなっていた。
夜の街で婦女子を物色していたとは思えないほどに好青年となっており、風音は驚き立ち止まりそうになったが、どうにか足を動かしながら笑顔を取り戻した。
「そうだったんですね!私、こうして貴方ともう一度お会い出来るなんて思ってもみなかったです。その……ご両親には反対されなかったんですか?」
「俺も藤の花の家紋賜ってすぐに姐さんに会えるとは思ってなかったですよ!両親については前に話した通り。てか、姐さんのこと話したら是非力になりたいってさ!俺、馬鹿してたけど実はそれなりの家の息子で……姐さんたちみたいに戦えないけど、力添えくらいなら出来るんです!」
財力は問題ないにしても鬼殺隊に関わると否が応でも命の危険は着いて回る。
今は鬼による被害は出ていないが、総力戦が近くなれば動き出すかもしれない。
こんな時期に剣士の一人が鬼になったのだから……既に動き出しているかもしれない。
それを知らないと言えど青年一家の決断は尊敬に値するもので、風音は立ち止まって深く頭を下げた。
「あなた方の決意、とても心強く思います。現在柱稽古を剣士たちと行っておりますので、剣士たちが立ち寄った際はどうぞよろしくお願いいたします。本当に……感謝の言葉だけでは足りないくらいですが、ありがとうございます」
「何で姐さんが頭下げてんすか!あ、えっと……夙柱 柊木風音様。我々は貴女のお父上に助けて頂いたご恩をお返し出来れば、とこの道を望みました」
とても柔らかく丁寧な言葉に風音が頭を上げると、今度は青年が頭を下げていたので表情を窺い知ることは出来なくなっていた。
どうしようかと風音が慌てる気配を感じ取りつつ、青年は言葉を続ける。