第21章 藤の花と全貌
『ちゃんと胡蝶のいうこと聞けよ。無茶言って困らせんな、胡蝶に口止めしても無駄だってこと肝に銘じとけ』
と実弥から凄まれやって来た本部。
失血死しないくらいまで血を抜けなどしのぶに言おうものなら、しのぶから実弥へと即座に鴉が飛ばされ、風音が悄気返るほどに激しい叱責が待ち受けている。
柱なのに柱からがっちりと首根っこを掴まれ暴走を食い止められている風音は、しのぶと共同研究を行うために神妙な面持ちで本部の門の前に佇んでいた。
「無茶をしないように。しのぶちゃんを困らせないように、体に害がないくらいの量を提供……よし、楓ちゃん!心の準備万端!後はしのぶちゃんがお迎えに来てくれるのを待つだけだね!」
心強い相棒である楓はすっかり定位置となった風音の腕の中。
余談であるが過去に何度か
自分で飛びますよ、と風音に申し出たものの、その度に悲しそうに目を潤まされたので、楓はそれ以上言うことが憚られお言葉に甘えて風音に抱っこしてもらっているらしい。
互いに互いの暖かさが心地よいのだろう、楓も深く身を沈み込ませて今やお気に入りの場所である。
「ハイ!到着時刻ハ既ニオ伝エシテイルノデ、ソロソロ来テ下サルカト」
一人と一羽が顔を見合わせて頷き微笑み合っていると、開かれるのを待っていた門がゆっくりと開かれていった。
その様子を風音と楓が笑顔のまま見つめ中からしのぶが出てくるのを今か今かと待ちわびて……中から顔を出した人物に目を丸くした。
「姐さん!お久しぶりです!お元気そうで何よりです!あ、本当に柱になったんですね!前に会った時は銀色の釦だったのに、金色の釦になってる!胡蝶さんの言った通りだ!」
なんと中から姿を現したのは、風音が柱に就任する前に、実弥と共に巡回していた警備地区で妙に懐いてきた青年だったのだ。
その青年の両親にとって風音の父親は命の恩人らしく、その恩に酬いるために何か力になりたいと仲間たちに話していたことが、風音の脳裏に一気に甦った。
「お?!お久しぶりです!どうしましょう、聞きたいことが山ほどありますが……どうしてこちらに?もしかして本当に藤の花の家紋を賜ったんですか?」