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涼風の残響【鬼滅の刃】

第3章 能力と剣士


ちょっと見てしまった風音の話しをおさまらない怒りを必死に抑えながら実弥が聞き、興味深そうに二人が聞いたところで親睦会はお開きとなった。

まだ眠気の来ていなかった風音に見送られ、今は恐らく眠っているであろう風音の能力に、実弥は改めてその正確性に驚きながら家路を急いでいる。

『警備を始めて約十分後、変な術みたいなのを使えない鬼が二十代前半の男性を街中で襲う現場に遭遇します。男性が傷付けられる前に実弥さんが鬼を倒すので、その場での負傷者はありません。でも恐怖からか足元が覚束無いので、倒れないように支えてあげてください』

これが風音が見た実弥の未来で、本当に同じことが目の前で起こったのだ。
風音の言葉をなぞるように鬼と男性に遭遇して鬼の頸を斬り、地面に尻もちを着いていた男性が立ち上がったと同時にその体がぐらつき、実弥が支えることで事なきを得た。

「あの能力のツケが感覚の共有と眠気か。眠気はまだしも感覚の共有が厄介だなァ……柱と言えど安易に試せねェ。死んだら共倒れじゃねぇか」

悶々とした気持ちのままようやく我が家に辿り着き門を開けると、何かが転がり出てきた。
思ってもいなかった何かしらに驚き、反射的に腰に差してある刀の柄に手をあてがうも……すぐにそこから手を離して転がり出てきたものに盛大に溜め息をついた。

「お前なァ……何やってやがる。こんな時間に敷地内と言えど外に出んなよ。死なねェって言っただろうが」

転がり出てきたもの…… 地面に座り込む風音の視線に合わせるためにしゃがんで手を差し出すと、少し冷たくなった手で握り返してきた。

「うん……でも少し寂しくて。ここなら実弥さんが帰ってきた時、一番早くお顔を見られるからつい」

遠慮気味に覗き込んでくる瞳から涙は流れていない。
だがつい先ほどまで泣いていたのだろうと分かるくらいにまつ毛が濡れている。

「そうかィ。だが藤の花も植えてねェし香も焚いてねェんだ。夜はあんま外に出んな。鬼が来ても俺が外に出てりゃ助けたくても助けられねェ。いいな?」

いつもなら怒鳴られるはずの行動だが、自分が不安定になると決まって実弥は優しい声音で話し掛け、まるで手の温かさを伝えるかのように肌に触れてくれる。
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