第3章 能力と剣士
「それはそうと……そのお館様と近しい力はどう扱っていくのだ?現状、急激な睡魔に襲われるならば無闇に使うわけにもいくまい」
実弥が目を血走らせようと怒鳴ろうと柱二人には全く効力を発揮せず、今もこうしてあっけらかんとして話題を転換させている。
それに対してもちろん実弥は大きく溜め息をつくが、指摘し直したとていたちごっこになるのは明白であるし、杏寿郎の疑問はこちらとしても願いたいことがあるものなので答える他ない。
「今んところは考えてんのは俺ん家、若しくは確実に安全と判断できる場所だけだ。しばらくは俺の先を見せて慣れさせる。慣れてから……双方にどんな影響があんのかはっきりしてから、お前たちのも見せてやってくれねェか?」
気まずそうに願う実弥の姿が珍しかったのか、二人してキョトンとした後にそれだけで了承したと分かる笑顔で頷いてくれた。
「それは構わない!しかし構わないのか?先を見させるといっても任務時のものを見た場合、俺が傷などを負えば風音にも影響が出るとの話だったが」
「俺も構わねぇけど、確かに苦痛がモロに伝わんのは可哀想だよなぁ。それを回避する方法はねぇの?」
実弥の風音の能力に対する懸念事項と同じものだ。
もちろん実弥としても敢えて苦痛を味わわせてたくはないが……鬼殺隊で能力を役立てたいという風音の願いを叶えるためには避けて通れない。
「今は回避する方法は分からないですが、それもどうにかすれば切り離せるかもしれません!」
この通り本人が強く願っているので様子を伺いつつ試させるしかないのだ。
「だとよ……まァ何にするにしてもコイツの色々が整ってからだ。今すぐ……」
「え?!それは困ります!居候の身で迷惑しかかけてないのに……今から三時間後、警備の様子を……」
そう言って握り締めたままだった手に力を入れたものだから、実弥は慌てて振り払い例の如く頬をムギュっと掴んだ。
「俺の弟子になんだよなァ……?つまり俺はお前の師範になんだよ!師範の指示に従え、分かったかァ?!」
「は……い。でも、ちょっと見えちゃった」
時すでに遅し。
風音が実弥から怒鳴られ涙目になるのを杏寿郎と天元が見たのは、風音が言葉を発した一秒後だった。