第20章 強化訓練と育手
「分かったから落ち着けェ。切腹なんて苦しい死に方選ぶくらいだ、そんなことすんのは元武士の家系……もしくは……」
(自分の弟子が鬼になっちまった育手か柱……クソッ、今の柱で爺さんはいねぇ……ってことは育手の可能性が高いか?!総力戦が近いって時に鬼になりやがった馬鹿はどこのどいつだァ?!)
風音を落ち着かせどうするのかを決めようと考えを纏めていると、とんでもない答えに行き着いてしまった。
そんな行き着いた答えに実弥の表情は険しくなるが、目の前で悲壮に満ちた表情をしながら必死に実弥の言葉に耳を傾けている風音がいる。
聞かなくても返ってくる答えなど分かりきっているが、現状を説明して判断を仰ぐことにした。
「恐らくその爺さんは誰かの育手だァ。確証はねェが弟子が鬼になっちまったんだろ。はァ……夙柱、お前は柱としてその爺さんをどうしたい?前にも言ったが俺はお前が鬼になればお前の頸を斬った後、爺さんと同じ道を選ぶ」
実弥の導き出した残酷な答えに風音が動きを止めた。
もし自分が誰かの師範となったとして、弟子が鬼になってしまったら……実弥と同じ道を選ぶかもしれないが……
「何が柱や育手としての正しい責任の取り方なのかは分かりません。でも……人を助けるために鬼狩りをしている私が、命を絶とうとしてる人を見過ごすなんて出来ない。どんな理由があったとしても……私は死んで欲しくない」
(まァそう言うだろうと思ったが……しゃあねェ)
以前に同じような話を実弥とした時と同じ返答だった。
もし自分が鬼になったとしても実弥には生きていて欲しいと願われた時と同じ返答。
想定通りの想いに応えるべく風音の額に自らの額をそっと合わせた。
「お前が見た先を俺にも送れ。その河原に向かうぞ」
「実弥君……ありがとう。今から一時間後くらいだから、まだ間に合うと思うの」
鮮明に送られてきた光景には実弥でさえ見知らぬ老人。
その老人の姿が全て見えるということは、老人が自刃する姿を見守っている誰かが近くにいるということだ。
「この視点……鬼殺隊に関係する爺さんなら鴉かァ?おい、風音。楓は近くにいるか?爽籟は近くにいねェんだよ……」
「それが楓ちゃんも少し前から姿が見えなくって……お爺さんに関係することで本部に呼ばれたのかな?」