第20章 強化訓練と育手
「悲鳴嶼さんの目が例え見えなくても私の声が届くのは、耳を傾けてくれているからです。人外の力を持ってる私を受け入れ、向き合って下さっているから……今の私があります。皆さんに追いつけるよう、お稽古に鍛錬に邁進します!」
風音の顔の造形や今の表情は目が見えないのではっきりと認識は出来ない。
しかし先にも言った通り、心のままに紡ぎ出される声音や言葉で、風音が今泣きながらも笑顔であることが十分に伝わった。
これがあるからこそ、どれだけ普段胃を煩わされようと叱責することをしでかされようと、実弥は側で見守り育て切ったのだろう。
こうして後輩たちが支え合い成長する様は行冥にとって何より嬉しく、風音につられて笑顔を深めた。
「さあ、柊木は不死川と共に少し休むといい。ちょうど不死川もここまで難無く到達したようだしな」
行冥と話しながらも耳には重い物が物凄い勢いで引きずられるような音が響いてきていた。
ただあまり話したことがなかった行冥と話せたことが嬉しく、目の前のことに夢中になっていたので振り返れなかっただけ。
「実弥君!私、悲鳴嶼さんのお稽古合格出来たんだよ!実弥君や鬼殺隊の皆さんのことを考えたらね、グッと力が入ったの!」
それが今行冥に促されたことにより、大好きで仕方ない実弥へと振り返り全速力で走りよって、両手で実弥の手を握りしめた。
先ほど大声で愛情表情を行ったことに苦言を呈してやろうと思っていたのに、こうも笑顔を向けられると実弥の勢いは削がれてしまう。
「全部聞いてたし見てたから知ってるっつーの……まさか先を越されるなんざ思わなかったが、よくやったじゃねェか。ほら、悲鳴嶼さんに礼言うぞ」
風音はもちろん実弥もが尊敬する鬼殺隊随一の力量をもつ行冥へ、二人は失礼がないようにしっかり汗を拭って深く頭を下げた。
「「ありがとうございました!手合わせもよろしくお願いします!」」
長い月日を共にしていると戦闘方法や隊服だけでなく、息もピッタリ合ってくるらしい。
寸分違わず述べられた言葉に行冥は嬉しそうな笑顔で頷き返した。