第3章 能力と剣士
時々実弥に助けてもらいつつも、どうにか話し終えるまでにはそれなりに時間を要した。
話し終わって二人の様子を伺うと、難しい顔をしてただ風音を見つめるだけで言葉は返ってこない。
それが風音に焦りをもたらし、前のめって二人に近づいた。
「お父さんのことは……私がケジメをつけるので、どうか鬼殺隊に入ることを許してください。今はこんな体型ですが早く健康体になって強くなります!実弥さんのお稽古にも泣き言を言わないって約束します」
「おい、ちょっと待て。コイツらはお前の話に珍しく動揺してるだけだァ。反対するならコイツらの場合、即答だっつぅの」
前のめっていた肩に手を置き実弥が風音を落ち着かせると、キョトンとした顔で実弥を見つめ返してきた。
「そう……なんですか?では私は実弥さんにお稽古をつけてもらって、鬼殺隊の剣士になることを目指して大丈夫ですか?」
伺うように二人へ視線を戻すと既に二人の表情は強ばっておらず、僅かに笑みを浮かべてくれていた。
「反対などするわけがない。過酷な人生を懸命に生きてきた君には、不死川のもとで穏やかに過ごしてもらいたいとは思うがな!」
「まぁ、茨の道に違ぇねぇが嬢ちゃんと不死川がそう決めたなら応援してやる!何だったら健康体になるまで、俺と煉獄で栄養あるもん運んできてやるよ!」
実弥の言った通り二人は風音が鬼殺隊に入ることに反対していたのではなく、敢えて険しい道を選んで進もうとする少女を心配していただけだった。
その気持ちが風音にとって何より嬉しく、満面の笑みとなって実弥の手を握りしめる。
「許してもらえました!それもこれも実弥さんの存在があってこそです!実弥さんも優しいけど、実弥さんの周りの人は優しい人ばかりです!心がポカポカします」
今まで見た中で殊更穏やかな風音の笑みに実弥は照れくさそうに頭を掻いてそっぽを向き、それを見過ごすはずのない賑やかな天元はニヤリと笑った。
「嬢ちゃんの成長も楽しみだがお前らの関係の成長も楽しみだな!」
「ふむ、よく分からんが仲が深まれば俺も嬉しいぞ!そして俺たちとも仲を深めてくれ!」
からかう天元と純粋に温かく見守ろうとしてくれている杏寿郎に、実弥が目を血走らせたのはすぐだった。