第20章 強化訓練と育手
「夙の呼吸 陸ノ型 紗夜嵐」
「炎の呼吸 伍ノ型 炎虎」
風音が暴露してから数時間。
その間に実弥と杏寿郎の凄まじい手合わせと、風音と実弥の竜巻起こる手合わせが終了した。
先の手合わせは互いの木刀が限界を迎えたことにより、次の手合わせは激しい攻防の末、風音の木刀が吹き飛んだことにより終わりを迎えたのだ。
そして現在、そろそろ終わりを迎えようとしている風音と杏寿郎の手合わせ中である。
「風音の技が煉獄の技に覆いかぶさってるが……まァ、勢いに押されて飲み込まれて終わるわな」
実弥の言葉通り、優勢に見えた風音の技は杏寿郎の技の勢いに吹き飛ばされ、炎の虎に飲み込まれて霧散してしまった。
それでも諦めず食らいついていく風音だったが、数年間柱を務めあげている杏寿郎の膝を地面に付けることは叶わなかった。
実弥との手合わせの時と同様、風音の木刀は弧を描いて空を舞い、遥か後ろの地面へと深く突き刺さる。
「風音、今日はこれでお終いにしよう。連戦だったので体が悲鳴を上げているだろう?」
鬼を前にすると好戦的になる少女は手合わせの際も好戦的となる。
それは実弥と手合わせをしているのを見学した時に嫌というほど見せ付けられた。
実弥が風音の木刀を弾き飛ばした後、いつも通り素直に引き下がり負けを認めると杏寿郎は思っていた。
しかし風音は引き下がることを良しとせず、木刀がないならばまだ体があると言わんばかりに体術を使い実弥に挑んで行ったのだ。
結果は言わずもがな、実弥の容赦ない返り討ちにあい、地面に押し倒され敗北と相成ったのだが……
今の風音の表情は素手で実弥に挑んで行った時と同じ。
隙あらば杏寿郎に何かしらの体術をくらわそうと機会を伺っているので、杏寿郎も杏寿郎で構えを解けずにいる。
「まだ向かってくるのならば、俺も君を地面に叩き付けることとなってしまう。まだ時間はある、今日は引きなさい」
先ほどの風音の奇襲(失敗に終わったが)を知っている杏寿郎に隙などなく…… 風音は体の力を抜いて両手を上に上げた。