第20章 強化訓練と育手
「何か聞こえたかァ?煉獄、聞こえてたんなら……他の奴らに今の話広めんじゃねぇぞ」
「しっかり聞こえていたな!しかし俺から特に広めるつもりはないので安心するといい!詳しく聞くこともしない、さ、さて、手合わせの続きを行おう!風音、君とも後ほど手合わせを願う!あ、痣者同士励もうではないか!」
二人の会話でようやく自分が何を暴露してしまったのか理解した風音。
実弥に負けず劣らず顔を真っ赤に染め杏寿郎に何度も頷き返し、実弥の胸の中にコソコソとお顔を戻した。
「ったく、煉獄だったからいいものの……」
杏寿郎がぎこちなく手足を動かし元いた場所へ戻るのを確認すると、真っ赤に染まった耳に顔を寄せて風音にだけ聴こえる声で囁く。
「いつでも一人の女として接してやる。今のうちに心の準備しとけ」
恥ずかしくも何とも嬉しい言葉に風音が実弥の体をキュッと抱き締めると、それに応えるように抱き締め返し、実弥は杏寿郎と手合わせを再開すべく体を離した。
「この後、お前は俺と煉獄との手合わせが待ってんだ。そっちの心の準備もしっかりしとけよォ?手加減なんてしてもらえると思うな」
ふわふわとした夢のような幸せな気持ちから一変。
現実へと戻ってきた風音は腰に差した木刀を握り締め、それに呼応するように気持ちも引き締め直して力強く頷いた。
「はい!実弥君、杏寿郎さん!手合わせ頑張って下さい!そして私との手合わせは全力でお願いします!傷薬は数えるのも諦めるほど作ってるので心配無用です!」
気合い十分。
まだ頬は僅かに赤く染まっているが、自分のすべきことをしっかり自覚している風音に二人は穏やかな笑みを向けて頷いた。
「怪我する前提かよ。柱なら俺らに傷を作るつもりでかかってきやがれ」
「ふむ、女子に傷を作るのは気が引ける。だがこちらは全力で挑むので君も全力でかかってきてくれ!では後ほどな!」
そうして二人は見ている者が目眩を覚えるほどの手合わせを再開させた。
……やはり空高く火災旋風が巻き起こったのは言うまでもない。