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涼風の残響【鬼滅の刃】

第20章 強化訓練と育手


「実弥君!杏寿郎さん!止まって下さい!痣が出てます!早くお薬飲まないと寿命縮んじゃいます!」

こんな近くで声を張り上げているのに何故聞こえないのか。
普段ならば今の状況で声が届かなくとも何とも思わないが、急を要する現在は何も思わないなど有り得ない。

命に関わる問題であるにも関わらず鬼殺に精を出す二人の手首を掴み、涙で滲む瞳をギュッと瞑った。

「もうっ!風柱様、炎柱様!私の話を聞いて!鬼を倒しても長く生きて欲しいの!今の状況をちゃんと見て自覚して下さい!」

物理的に動きを止められた二人の耳に届いたのは少女の涙ながらの訴え。
恐る恐る二人が手首を握られたままの姿で風音に顔を向けると、震えくぐもった声から予測した通りポロポロと涙を零していた。

「風音?お前、何泣いてんだよ?見て自覚しろって何を……」

「杏寿郎さんの左頬を見て!痣が出てる……一度中断してお薬飲みましょう?いなくならないでほしい……側で笑って生きて欲しい。お願い……します」

そう言葉を紡ぐ風音の右腕にも風と葉を模した若葉色の痣が出ており、強い興奮状態に陥ってしまっているのだと分かる。

実弥は慌てて杏寿郎の左頬に視線を映し……木刀を地面に転がした。

「お前、痣出てんじゃねェか。言った傍から……」

「む、そうなのか?どうりで体が熱く感じてたわけだ!風音、心配をかけてすまなかった。俺に薬を分けてもらえるか?」

ようやく今の状況をしっかり見て自覚した二人の落ち着いた声に風音は頷いて手首を解放し、鞄の見やすい場所に鎮座させておいた薬を杏寿郎に手渡した。

そして薬を飲むまでは目を離すまいと、風音の瞳はずっと杏寿郎の一挙手一投足を永遠と見つめ続けている。

「そんな見なくても薬飲むってぇの。風音、こっち向け」

杏寿郎が口に薬を流し込んだところまで確認すると、風音は声に促されるまま実弥に向き直る。
すると少し固いが優しい暖かさのあるものが頬の涙を拭い取ってくれた。

「泣かせちまって悪かった」

実弥は風音の頬に手を当てて、頬を流れていた涙を指で拭い取ると、その手を頭に移動させてふわふわと柔い力で髪の上を滑らせた。
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