第20章 強化訓練と育手
「お前の落ち度に違いねェ……コイツらを剣士として見て稽古してるからそんなことになるんだよ。任務中だと思え、そうすりゃあ油断も隙も生まれねェだろ」
珍しい実弥の静かな叱責に風音は小さく頷き、未だに気まずそうに眉を下げている剣士たちに笑顔で向き直った。
「さっきはお稽古中なのに不甲斐ないところを見せてしまってごめんなさい!明日からは気を引き締めて新たな気持ちでお稽古させていただきますので、よろしくお願いいたします!」
今日まで全力で剣士たちに稽古を付けていたことに違いはない。
総力戦で剣士たちを生かすため、まだ先の分からない決着で鬼を殲滅させるために稽古を付けているのだから。
だが風音は目の前にいるのが剣士故に隙が生まれていた。
その隙は実弥の静かな叱責により払拭されたので皆無となり……明日から改めて行われる夙柱の稽古は厳しくなると予想される。
「よかったじゃねぇかァ、夙柱様に全力で相手して貰えんぞ。今日馬鹿した分、明日から精々励むこった。……馬鹿を信じたコイツもコイツだがなァ……ほら、行くぞ」
冷や汗を流しながら微笑んだ風音は実弥に促され不死川邸へと足を向け、その後を肩を落とした剣士たちがぞろぞろ追い掛けた。
あれから一ヶ月。
風音は日々増えていく剣士たちに厳しさの増した稽古を付け続け、初期に稽古を付けた勇たちや基準を満たした剣士たちを送り出す毎日を送っていた。
そんなある日の朝、風音と実弥は大量の食事の準備に勤しんでいる。
それもこれもある人物を迎え入れるためである。
「これ、俺らの何日分の量だよ……アイツの胃袋どうなってんだァ?甘露寺も大概だが」
「私たち二人の三日分くらいありそうだね!胃袋がどうなってるか分からないけど、久々にお会い出来るから楽しみ!もうそろそろ到着しそうだけど……ご飯の準備出来たから外見てきていい?」
会話の内容から柱の一人が到着するのだろう。
嬉しそうにニコニコしながら手を洗う風音の頭を撫で、構わないと言うように実弥が頷いた。
「俺も行く。迎えに来たお前が転んじまったら煉獄も堪んねぇだろうからなァ」