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涼風の残響【鬼滅の刃】

第20章 強化訓練と育手


剣士たちが実弥に追いかけ回されてから一週間余りが経過した。

あれから剣士の数は三人増え、黄昏時が近づきつつある現在風音は八人の剣士たち相手に鬼ごっこを敢行中である。

「日が暮れて万が一鬼が出てもいけませんし、あと十五分でお稽古を終わります。頑張って下さい!私も疲労が溜まってるので、一番捕まえやすいですよ!」

剣士たちの目に映る風音は息切れしており、額から首筋へと汗が流れている。
言葉通り風音を捕まえやすい頃合いなのだろうが、風音に疲労が溜まっているということは剣士たちにも疲労が溜まっているということ。

全員が肩で息をして今にも倒れ込みそうな様相だ。
そんな中で勇がニコリと笑顔を浮かべる。

「確かにそうだよな…… 風音、捕まえればいいんだよな?その方法は問わない?」

「問わないよ?私は勇さんたちの視線や体の予備動作から、選ぶであろう未来一つに絞って見ているから、私に対して予測不可能な動きをすれば捕まえられます。隙をつくのもお稽古の一環です!」

「そっか!あ、風音……サッちゃんが空飛んでる!」

「え?!どこ?!」

妙に素直な風音は勇の現実ではありえない言葉に何故か反応し、指をさされた空を見上げる。

「ゴメン!」

目をキラキラさせ空を見渡している風音の手や腕が……遠慮気味に八つの手によって握られてしまった。

「あ……捕まっちゃった……えっと、サッちゃんが空飛んでるって言うのは?」

「ご……ごめん。空飛んでない。まさか信じてくれるなんて思ってなくて……」

風音しょんぼり。

良く考えれば……いや、良く考えなくてもサチが空を飛ぶなど有り得ないのだが、疲労が溜まり思考回路が通常時より鈍くなっている頭では非現実的なことだと判断できなくなっていたのだ。

「ひ、柊木さん。今のはナシで……すいません、明日も稽古お願いします」

捕まったことよりサチが空を飛んでいなかった現実に落ち込む風音を前に、言葉を発した牧野を筆頭に全員の心の中を罪悪感で満たしていった。

それ故に皆の手が離れ、一斉に頭を下げる。

『すみませんでした!明日もよろしくお願いします!』

大きな声での謝罪や挨拶に落ち込んでいた風音は飛び上がり、心臓をバクバクさせながら頭を下げた。
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