第3章 能力と剣士
「あれほど明るく愛嬌があれば、場所が場所なら人気者になりそうだ。不器用ながら不死川も可愛がっているようだしな!この家で心穏やかに過ごして欲しいものだ!」
「いくら不死川と言えど、自分の行く先々に雛鳥みてぇに後着いてこられっと可愛いってなるわな!嬢ちゃんの髪色って金だろ?まんまヒヨコみてぇだよな!」
「うむ!確かにヒヨコみたいだ!」
なんと隠していた髪色が二人にはバレていた。
柱ともなれば観察眼も優れるのかもしれない……
そんな二人を居間に通すと、共に寛ぐと思っていた風音はその部屋に入らず自分の着物をくるりと見回し匂いを嗅いで飛び上がった。
「すぐ戻ります!柔軟をして汗をかいていたみたいで……」
「柔軟?君は鬼殺隊に入るのか?」
柔軟と言われて鬼殺隊と結びつくのはやはり鬼殺隊の柱だから仕方がないのかもしれない。
しかも結びついた答えが正解なので風音は驚くと共に頷き、二人に不快な思いをさせないようにと僅かに距離をとった。
「はい!まだ体が骨張っているのでお稽古は先だと言われてますが、柔軟くらいならばしても構わないって実弥さんに言ってもらって。見てください!」
そう言って首を傾げる二人の前で前傾姿勢を取るも、やはり全く床に手がつかずプルプル震えている。
「ブハッ、嬢ちゃん体硬ぇなぁ!今するより風呂上がりの方が……」
「お前……何やってんだァ?んでなんで俺ん家に煉獄と宇髄がいやがる……なんか騒がしいと思えばどういう状況だよ」
必死に前傾姿勢を取り続けていた風音の背にもたれ掛かるように体を預け溜め息を零したのはこの屋敷の主、実弥。
どうやら賑やかな三人の遣り取りに目を覚まし様子を見に来たようだ。
そして様子を見たら見たで一人は前傾姿勢を取っているし、一人は吹き出し一人は明後日の方向を笑顔で見つめているのだから、溜め息の一つでも零して呆れたくもなるだろう。
「親交を深めに……来て下さいました。それで柔軟をさっきから始めたのでそれを見てもらおうと……こうしています。あの実弥さん、痛いし色々大変です……私の腱が悲鳴上げてる!千切れる!大変です!いたたた!」
「これくらいで千切れてたまるかァ。もう少し頑張っとけ。お前ら、人の眠りを妨げたんだァ……手土産の一つでも持ってきたんだろうなァ?」