第20章 強化訓練と育手
本当に嬉しそうに笑う風音に小芭内もつられて笑顔となり、機嫌よく体を揺らして風音に撫でてもらっている鏑丸を見遣る。
「遠慮なくいただくことにする。柊木、明日は軽く稽古の続きをした後、手合せを願う。今日はしっかり休むといい」
「はい、よろしくお願いいたします!お夕飯は私と剣士の皆さんとで用意するので」
「そんなもの愚図共にさせろ。コイツらは今日一日ほぼ杭に縛られていただけだからな。体力も有り余っているだろうし……そうだ、コイツらに言っておかなくてはな」
夕餉の支度をすることが決定された……小芭内曰く一日杭に縛られていただけの剣士たちは、自分たちに向けられた小芭内のやけに静かな視線に冷や汗をダラダラ。
しかし小芭内がそんなこと気にするはずもなく、撫でられ終えて尚ご機嫌の鏑丸に小さく息を零して言葉を発した。
「貴様らの内、何人かは柊木に先を見せてもらっていたな。問い質すな、何も疑問を持たず受け入れろ。ただ一つ、柊木は総力戦でこの力を使う予定だ。命に関わる代償がある力を貴様ら愚図共に使うのだ、それがどういう事なのかを頭が擦り切れるほど考えてから明日からの稽古に挑め」
シン……と道場内が静まり返った。
そもそも杭に縛り付けられると同時に口も布で塞がれてしまうので声すら出せないのだが、それを踏まえても自身の心臓の音が聞こえるのではと思えるほどに静まり返っている。
それが剣士たちの了承の意だと判断した小芭内は剣士たちに背を向けた後、感謝を述べるように深く頭を下げていた風音の肩をポンと叩いた。
「君のことだ、その力を戦で使うことがどういう事なのか理解していると思う。しかし無闇矢鱈とそれを使うことのないように、不死川や俺たち柱としっかり話し使い所を考えよう。一人で突っ走らないようにな」
出会った頃から小芭内は風音に優しくしてくれていた。
初めは単に実弥の保護した少女だからと言う理由だけだったかもしれないが、今は一人の仲間として身を案じてくれている。
それが風音にとってとても嬉しく、その想いを踏み躙らないよう顔を上げて大きく頷いた。
「はい!ありがとうございます。皆さんの命や優しい想いを蔑ろにしないよう、慎重に考えて使います!」
素直に返事を返した風音に再度笑みを零し、小芭内は道場を後にした。