第20章 強化訓練と育手
一分後。
ガクガクと震えていた剣士は他の剣士たちと同じく、床や壁から突き出している杭の一つに縛り付けられてしまった。
「な、なるほどです。実弥君とはまた違ったものですね。……うん、分かりました!ではお稽古をお願いします!まずは剣士の皆さんを解放するところからですね!お任せ下さい!私が一人で」
「何を言っている?コイツら愚図はこのまま縛り付けた状態で柊木の稽古を始める。不死川のことだ、早々に音を上げた愚図の体を地面に埋めて稽古を続行していただろう?それと同じだ」
鞄の中に入れていた手拭いを敷いて、楓を道場の隅に移動させていた風音の手が止まった。
「い、いえ。実弥君は剣士の皆さんを地面に埋めていませんでした。その代わりと言いますか……怪我をしようと疲労で倒れようと、問答無用で稽古に連れ戻していましたが……地面には……」
相変わらず冷や汗を流しながら小芭内のいる方へ向き直ると、目を真ん丸に見開き驚いた様子の小芭内の姿。
「不死川がそれだけで済ませていたのか?……まぁ、それについては後で詳しく聞かせてもらうとしよう。柊木、時間は待ってはくれないぞ。早く構えろ」
「詳しく……えっと、か、かしこまりました!つまり剣士の皆さんを避けながら伊黒さんの動きに反応し、一太刀入れることが出来れば合格……でよろしいですか?」
物分りのいい素直な風音に小芭内は満足気に頷き、一瞬にして雰囲気を張り詰めさせて木刀を構え直した。
「予知を使って俺の先の動きを見ても構わない。余裕があるならば俺にも先を送り、君の能力や俊敏さを向上させるといい。行くぞ!」
甲高い木刀がぶつかり合う音が道場内に響き渡った。
実弥のように容赦ない小芭内の襲撃に即座に反応し、杭に縛り付けた剣士の背後に回った体を追う。
「流石にこれくらい受けることは造作もないか。しかしどうする?今の柊木の動きでは愚図を殴りつけることになるぞ」
「そうですね……でも私は伊黒さんにお稽古を付けていただいていました。その動きを忘れたことはありません!」