第20章 強化訓練と育手
鬼のような打込み稽古に加え腕立てをした剣士たち。
勇を含む牧野たち剣士全員が地面へと倒れ込み、目を見開いて全身で息をしている。
その傍らには平気な顔して佇み一点を見つめる実弥の姿。
目を見開き全身で息をしている剣士たちも同じ方向を見つめていた。
皆の視線の先には基礎鍛錬や打込み稽古を終わらせ、技の反芻を一人で行っている風音。
「夙の呼吸 漆ノ型 裂葉風」
夙の呼吸が得意とする跳躍する技。
風音が体を幾度か捻りながら跳躍して木刀を勢いよく横に薙ぐと、技名の通り葉を裂くような薄く鋭い風の刃が顕現し、的を木っ端微塵に切り刻んだ。
「はぁ……まだ練度上げれそう。木っ端微塵じゃなくて粉微塵にしたいなぁ……ん?あ、お疲れ様です!……少し目を離した間に大変なことに!」
技を出し終えた風音の瞳に映ったのは死んだような目で地面に横たわる剣士たち。
そんな剣士たちのために何が出来るかを必死に考えた結果、作りおいていた薬湯が頭の中に浮かぶ。
「ちょっと待っててね!冷えた美味しい飲み物があるんです!薬湯に果汁を混ぜた飲み物が!疲れた体に……」
皆のためにと作っておいた飲み物を取りに行こうと縁側に体を向けたが、側に歩み寄ってきていた実弥に手首を掴まれることによって阻まれた。
首を傾げる風音に実弥から剣士たちにとって無情なお言葉。
「あぁ……コイツら甘やかせんなァ。冷蔵機ん中に飲み物入ってんなら自分で取りに行かせろ。それより風音、粉微塵にしてぇならもっと斬撃出しゃいい。例えばだなァ……」
剣士たちにとって無情な言葉を放った実弥は風音の手首を解放し、つい今し方風音がとっていた構えをとった。
「夙の呼吸 漆ノ型 裂葉風」
風音より遥かに低い声が技名を紡いだかと思うと、風ではなく派生の夙にも関わらず風音に負けず劣らずな高さに跳躍した。
そして同じように体を捻り木刀を一度ではなく幾度か横に薙いで、的へと的確に斬撃を見舞って…… 風音が望んだ通り的を粉微塵に粉砕。
「一回で放てる斬撃の数には限りあんだろ。お前の跳躍、技放つまでの速度ならあと二・三振り出来る。休憩した後に試してみろ、付き合ってやるから」